月うさぎ  
 
夜中、夢遊病のハイジが、自分でゼーゼマン家の玄関の鍵を開けて外へ出たとき、開いたドアから青白い月の光が差し込んでいたということです。アルムに帰った夜、おじいさんは、ハイジに月の光が差し込まないように、丸窓に干草を詰めました。月の光が夢遊病に悪い影響をもたらすというのは、当時、スイスで言われていた迷信だそうですが、ここでは、むしろハイジが愛した日の光と対照的に、夜陰を照らす月の光の中で起こる病気として、夢遊病が登場しているようにも思います。
 
物心つき始めた頃でしょうか。
私は、夜が嫌いでした。
寝入り端に喘息の発作を起こすことが、たびたびあったことが大きいと思います。
 
たぶん日本では、「おつきさま」が、病気を起こすことはなくて、
私が育った地方では、十五夜には、里芋を供えていました。
 
昔々のある夜、満月を見上げて、母が、「うさぎがいる。」と言ったことがありました。
それを聞いて私は、かわいいうさぎが住んでいるとおもしろいなと思ったようです。
 
小学一年生のときだったと思いますが、
理科のテストに、「月にうさぎはいますか?」という問題が出ました。
「いる」「いない」の二つから選ぶようになっていました。
半信半疑だったけれど、たぶん、いないのだろうと思いました。
でも、自分の手で「いない」に○をつけるのは寂しくて、「いる」に○をつけました。
 
答案用紙が返って来ました。
しっかり、×がついていました。(やっぱり、うさぎ、いないんだ…。)
母は、あきれて、「アポロが月に到着したことを報道したテレビ映像に、うさぎ映っていた?」と私に言いました。ちょうど、アメリカのアポロ計画の時代でした。
 
ずいぶん経って、この年、母はPTAの新聞に、このことについて記事を投稿してくれていたことを知りました。当時の私の作文や絵と一緒に、母の記事が保存されていました。短い文章ですが、「アポロ10号! 科学とお伽話」と題して、「科学の発展とともに、これからの時代、子供たちにお伽話が通じなくなるのではないかと思うと、残念ですね。」というようなことが書かれていました。
 
月明かりの夜、巡らせた小さな空想は、○でも×でもないんですよね!
 
よるです。
こんやは まんまるの おつきさま。
 
<引用図書> おつきさま(フレーベル館/やすいすえこ 作)
 
 
素材 hare's MIDI
 
2007.11.15. up
2006. 9.17. up