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ふたたびアルム
 
 
石竹 (セキチク)  おじいさんが、クララのために、山羊のスワンがいいミルクを出すように食べさせようと採って来た薬草の一つ。原文では、Nelken。辞書で調べると、撫子(なでしこ)と出て来ます。唐撫子(石竹)は、目がはっきり見えるようになる薬効があるそうです。Dianthus sylvestris
 
<参考サイト> 大辞林 第二版(三省堂)・社団法人 長野県薬剤師会撫子(なでしこ))
 
■タイム  おじいさんが、クララのために、山羊のスワンがいいミルクを出すように食べさせようと採って来た薬草の一つ。ドイツ語原文では、Thymian。和名、立麝香草(たちじゃこうそう)。風邪、神経痛、リュウマチ、消化器疾患などに薬効。防腐作用も。ヨーロッパでは、勇気、活動、行動力、気品、優雅さの象徴。クララはスワンを通じて、象徴のほうも一緒に摂取したかも。洋種伊吹麝香草
 
<参考図書> 元気をくれるハーブティーコレクション38 (同文書院)
 
■またハイジだけになって  クララがやって来てずっと機嫌のよくないペーター。車椅子を突き落として壊してしまいました。ペーターは、車椅子がなくなれば、クララが帰って、またハイジだけになるだろう。。ただ、そう考えただけで、その後のことには考えが及んでいなかったということです。悪いことをしてしまったことに気づく様子が、段階的に描かれているように思います。ペーター、そんなに怒らなくても、前の年の秋に訪れたクラッセン先生は、ペーターに話しかけようとしていたし、クララだって友達になれるのに。
 

■ペーターをぐさりと刺しました  クララに立ってほしいハイジは、ペーターに手伝いを頼みましたが、手を貸そうとしません。ハイジは、お弁当をあげないとおどしたつもりでしたが、ペーターは車椅子を壊したことを知っていると勘違いして驚きました。ハイジはフランクフルトから帰ってからは、ペーターに対して少し毅然とした態度を見せるようになったようです。ペーターは、手を貸しました。クララは、ハイジとペーターに支えられながら、一歩、また一歩… 歩けることが分かったのでした。

 
■「ここにすわってもいいかしら?」  この日の朝、車椅子がなくなっていたので、おじいさんは毛布を何枚も重ねたところにクララをすわらせていました。今まで地面にじかにすわったことなんてなかったクララ。自分の足で歩き、自分の意思で、お花畑の中に腰を下ろしました。
 
酸葉 (スイバ)  車椅子についての村人のうわさを聞いて、警察に引き渡されるのではという恐怖を味わったペーターは、家に帰ると、ベッドにもぐりこんでうなっていました。ブリギッテは、酸葉(ドイツ語原文 Sauerampfer)を食べて胃が痛いんだろうと言うと、おばあさんは、心配して、自分のパンから一切れ持たせてあげるように言うのでした。酸葉は、日本でも父の時代には、子供のおやつとして食べられていたと聞いたことがあります。食べ過ぎるといけないそうです。ところで、原文のブリギッテは、ペーターのことを、Peterli と呼んでいます。li は、スイスのドイツ語で、〜ちゃん。
 
<参考サイト> 北信州の道草図鑑スイバ
 
お祈り  クララが歩けるようになった夜、ハイジは自分の経験から気づいたことをクララに言いました。フランクフルトで苦しかった頃、すぐに故郷に帰ることができたとすれば、こうしてクララが元気になることもなかったわけです。神さまは、時には願いをかなえてくださらないけれど、もっといいことに導いてくださる。何もかもが神さまからいただきもの。だから、毎日お祈りを欠かさないようにして、神さまを忘れないでいることを分かってもらわなければ。神さまに忘れてしまわれないように。全部おばあさまに教わったことです。ドイツ語原文は、wenn wir den lieben Gott vergessen wollen, so vergißt er uns auch, 「もし私たちが愛する神さまを忘れてしまったら、神さまも私たちを抜かされる。」 何だかドキッとします。うれしいことも神さまの御恵みとして神さまをほめたたえましょうということでしょうか? プロテスタント系の牧師さんがこれに近いかも知れない説教をされたのを聞いたことがありました。神さまの愛は人知を超えて絶対。ただ、一般的な人間関係のように、神さまにも、いつも「ありがとう。」「ごめんなさい。」が言える関係が望ましい、ということでした。二人の子供は、それぞれの仕方で神さまに祈りをささげたということです。
 
■どちらもいとおしくてならない  クララの食欲が増していくのを喜んで見ていたおじいさんでしたが、元気な子供たちと清潔な山羊には、どちらも満足だったということです。日々の暮らしの中で、ずっと変わらない愛情をかけて育てているおじいさん。。このあたりでは、もう70歳代半ばになろうとしていますが、まだまだ頼もしいです。。おじいさんが健康に恵まれているおかげで、ハイジは、故郷に戻って来ることができました。そして、おじいさんの昔の経験を生かした献身的な努力が実って、クララが元気になりました。
 
■大つぶの涙  アルムを訪れたゼーゼマン氏は、元気そうなクララを見つけて、驚きました。思い出したのは、元気な頃のクララの母親でした。外国で忙しく働くゼーゼマン氏もまた、妻を亡くしていたのでした。
 
■アルプスのばら  ゼーゼマン氏は、故郷に戻って元気になったハイジを見て、アルプスのばら(ドイツ語原文 Alpenröschen)よりも晴れやかだと言いました。アルペンローゼは、エンツィアンやエーデルワイスとともに、アルプスの三大花。ばらではなくシャクナゲの仲間だそうです。アルペンローゼ三大名花
 

<参考サイト> チロル州観光局日本担当オフィス

 
■りんどう  すっかり元気になったクララに会いに、おばあさまが来るというので、おじいさんが、山の花畑にたくさん採りに行って、もみの木の下を飾ったりんどうの花。おじいさん、心配りが粋です。りんどうは、ドイツ語原文では、エンツィアン。紺色のエンツィアン(dunkelblauen Enzianen)です。アルペンローゼやエーデルワイスとともに、アルプスの三大花。 一口にエンツィアンと言っても、種類があるそうです。 高山の花は、どれも可憐。ちなみに、最寄の花屋さんでよく見かける背の高いりんどうは、えぞりんどう(蝦夷竜胆)の栽培品種でした。おばあさまは、りんどうに歓声をあげ、飾ってくれたのは誰だろうと思いました。おじいさんだということに気づくところは出て来ません。気づいてほしいような、そっとしておきたいような… 六甲高山植物園のエンチアン三大名花
 
<参考サイト> チロル州観光局日本担当オフィス
 
赤い笛 蛙刺し  フランクフルトのおみやげを何かというおばあさまに、ペーターは、歳の市で売っていて、山羊飼いの仕事にあると便利なもので、今まで買えないでいたものを思い出しました。どちらがいちばんほしいか考えても思いつかなかったために、金額で答えました。10ペニヒ。おばあさまは、10ペニヒを52週分、財布から取り出しました。仕事に使うものをほしがっていたなんて、マジメなペーターです。10ペニヒを52週分もらっても、ペーターの言ったことがほんとうになって、さらにずっともらい続けたとしても、マジメなペーターでいてほしいような気がします。
 

■わしのよろこび  クララがお世話になった御礼に何かという話に、おじいさんは、クララが元気になったのは、自分の喜びでもあると言いました。クララにとって、おじいさんのような人に出会ったことは、幸運でしたが、おじいさんにとっても、必要とされたのは、何よりだったのではないでしょうか。自分には何もいらないけれど、自分がいなくなっても、ハイジが一生食べるに困らないようにしてあげてほしいと言いました。国内に仕事が少なかった時代、女性が外国に働きに行くケースも珍しくなかったそうです。ハイジの場合は、ふたたび外国で暮らすようなことになってはいけないと案ずる気持ちもあったのでしょうか。

 
■神さまにお礼を言いに  まだ、ハイジを連れて行かれるのではと心配なペーターのおばあさんに、おばあさまは、自分たちのほうから、神さまにお礼を言いに、毎年、アルムにやって来ると言いました。ゼーゼマン氏は、おじいさんとハイジを訪ねた後、おばあさまとスイス旅行を計画していました。クララも同行できるようになっていたのです。ゼーゼマン家では留守番ばかりのクララでしたが、これからは、父親やおばあさまと旅行ができるようになりました。
 
■いいこと  クララがお世話になった御礼に何かという話に、ハイジは、ペーターのおばあさんに、ゼーゼマン家で自分が使っていたベッドをあげてほしいと言いました。おばあさまは、「あんまりうれしいと、まっ先に考えないといけないことを忘れてしまうのね。神さまがいいことをしてくださったら、いちばんこまっている人のことを思わなくてはいけないのに。」と言って、電報でロッテンマイアにベッドの荷造りを頼むことを決めます。また、ハイジは、おばあさんの暮らしを全部おばあさまに話しました。おばあさまは心から同情して聞きました。一般的に困っていても施しは受けないというタイプの人もいるように思いますが、おばあさんは違っていました。思いやりをどこまでも謙虚に感謝するおばあさんに、おばあさまは言いました。神さまの前では、みんなおなじ。みんな貧しいものだと。。この作品には、大きな貧富の差が存在します。しかし、おばあさんは何も言いませんが、「貧しい人々は偉大です! 貧しい人々はすばらしい人々です! 貧しい人々は非常に寛大な心を持っています! 彼らは、私たちが与える以上のものを、私たちに与えてくれるのです。」「持ち物が少なければ少ないほど、多く与えることができます。矛盾としか思えないでしょう。でもこれが愛の論理なのですよ。」(ともにマザーテレサの言葉)かも知れません。ハイジがおばあさんを慕うのも、たくさんの優しさをもらえるからなのかも知れません。ゼーゼマン家と、アルムの住人たちの間には、上下関係はありません。皆がそれぞれに弱さを抱え、思いやりの力で元気になって行きます。
 
<引用図書> 岩波少年文庫ハイジ下・マザー・テレサ 愛と祈りのことば(PHP文庫)
 
■お恵みのお礼  この物語は、おばあさんの 「ハイジ、賛美歌を読んでおくれな! 何だかもう、あたしには、天の神さまをほめたたえ、ありがたいお恵みのお礼を申し上げるよりほかに、何もすることがなくなっちまったみたいだよ。」という言葉で閉じています。数々の恵みに喜ぶおばあさんの潔さ。
 
Keep on the sunny side!
 
<引用図書> 福音館文庫ハイジ下
 
 
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素材 MIDI ぶれすおーる