うまコラム

 ブルックリンの下町の古本屋で、「人生なればこそ」Only in life という黒人の書いた詩集を見たとき、いい題だな、と思った。
人生なればこそ……と、書きはじめれば、下にどんな句でもつづけられるからである。
 
 さしあたって私は、
 「人生なればこそ、賭けるのである」
 というフレーズを思いついた。
 それが、私の競馬をはじめた動機のすべてだからである。
 
 この場合の「賭ける」は、ギャンブルの賭け、とはちがって、より原始的な意味で、「選択する」というほどの意味である。私たちの人生とは、いわば選択であり、知りたいという願望であり、運命に祝福されたい、とねがう心のあらわれだからである。
 
寺山修司
(日本中央競馬会発行『中央競馬のすべて』に寄せた随筆「競馬と私」から)

 詩人の寺山修司さんが昭和45年から報知新聞で連載していたコラム「競馬場で逢おう」。今でこそスポーツ紙上に芸能人や文化人の予想が載るのはあたり前になりましたが、当時は“観戦記”ならともかく、予想というのは珍しかったそうで、これがジャーナリスト以外の人物による予想コラムの走りだったそうです。

 その後、大橋巨泉さんや江戸屋猫八さんのコラムなどが人気を博し、競馬ブームを違った面から後押ししました。

 寺山修司さんは昭和58年(ミスターシービーが三冠を達成した年)の5月4日、肝硬変から急性腹膜炎を患い47歳の若さで死去しました。

 『中央競馬のすべて』という本の巻頭に載っていたエッセイがあまりにもすばらしかったので、ここに引用させていただきました。


※このコーナーでは、競馬や競走馬、馬の歴史について、書いていきたいのですが、なにぶんこのサイトのメーンである「名馬ミニ事典」が半分も完成していないので、しばらくはメーンの記事作りに集中したいと思います。ある程度体裁が整ったら、こちらのコーナーも充実させていきたいと思っております。