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「"ホテル"はやはり、三流だった」
9:00起床。ホテルの食堂で朝食を摂る。普通の西洋風の
ブレックファストのメニューを、バイキング形式で選ぶものであった。
食後、コーヒーのおかわりを頼むと、ムスッっとしたおねえちゃんが
ぶっきらぼうにコーヒーをついでくれた。これはこれで、
ある意味素人っぽさもあり、訓練の行き届いた日本のホテルの
サービスなどと違うところに面白みも感じた。しかし、訪蒙当日に
滞在した時にも感じたことだが、やはり「モンゴルでは一流」
とは言っても、実際にはやはり二流、三流のホテルである。

このホテルは、建物の造りからサービスのスタイル、
食事の種類や部屋の調度品まで、全て西洋風のホテルに
仕立て上げられている。どこにも、モンゴル「らしさ」は、無い。
このホテルに居て「モンゴル」を感じた時というのは、まさに
国営放送でモンゴル相撲の中継を観た、その時だけである。
ホテルの食堂では、ディナー時間にロックバンドの生演奏なども聴けるらしい。
しかし私にはそもそも、この"ホテル"という形式自体に、何かしらの疑問を感じる。
白人が造り上げ、いつの間にか「グローバル・スタンダード」という
ことになってしまっている生活スタイルを、ただ形だけを真似して
ホテルなどを造ってみるのだから、それが猿真似に過ぎないのは
当然のことだ。それでも年月を重ね、技術と経験を積み重ねれば、
日本のホテル並みの優れたサービスを提供する時もいずれ来るだろうが、
それができるようになったからといって、一体何になるのか、という気もする。
やはり、白人のスタイルを真似て、白人の価値尺度でもって
「サービス」という概念の良し悪しを判断するだけのことではないのか。

「郷に入っては郷に従え」という。事実、私達は草原での車の旅でも
ゲルでのホームステイの時でもそうしてきたし、逆に牧民の方々も、
異邦人である我々に格別の配慮をしてくださった。
それが、旅というものなのではないだろうか。
こういう「モンゴルなり」のスタイルを、より産業化し、合理化し、
多くの宿泊客に効率的に対処できるシステムとして構築できないものか、と思う。
たとえば、ゲルでは大人数を宿泊させることが非効率なので複数階を持つ
建築物を造ることはやむを得ないとしても、建物のデザインに趣向を凝らす。
室内の調度関連にも伝統的なデザインを用い、宿泊客は伝統衣装を身にまとう。
そして、それらのホテルをモンゴル最大の「売り」である大草原を間近に感じられる場所に
立地させる。ビジネスホテルではないのだから、市街中心部から外れる不便さは
この際我慢してもらう。これらの工夫をするだけでも、随分と違うのではないだろうか。

ある意味、日本の民宿の存在感を再認識したものである。
日本で民宿に泊まれば、それが何人であれ、共同風呂に入り、
浴衣をまとい、畳に座って食事をし、布団にくるまって眠る。
箸の使えない外国人の為にフォークなどが用意されることもあろう。
これは、慣れない異邦人への配慮というものだが、だからといって、
部屋にベッドを持ち込むようなことは、しないだろう。
特別に外国人のために風呂を貸切にしたりも、普通はしない。
ちょうど、ウランバートル郊外にある「ツーリスト・ゲル」が
これにあたるのかもしれない。ならばこのスタイルを、
より広範に活用すればよいのではないだろうか。

これから勃興してゆく国は、自国の伝統文化を継承し、守りながら、
一方でそれを時代に合わせて変化させ、自分達なりの
新しい価値を生み出してゆく必要があるだろう、と思う。
これは、何もモンゴルに限ったことではない。
日本の文化にとっても、同様に突きつけられた命題なのだと思う。

 

「草原にのさばる海賊たち」
昨日まででデジカメのメモリーを
ほとんど使い果たしてしまったので、
これ以降はあまり写真は登場しない。

ウランバートル市内の観光、というよりもこの日のメインは
やはり「お買い物」である。この町も民主化後近代化が進み、
様々に新しい施設が造られつつある。その中でも、
韓国資本の企業が設立した「スカイショッピングセンター」という
施設は、とびきりの大きさを持つ。とは言え、日本で言えば
都市郊外にあるような大型ショッピングモールと同程度である。
何より施設が新しく、今の日本のものとほとんど遜色ない。
さすがは外国系資本、である。店舗が外国系、というだけではない。
店の中に売っている商品も、その大半が外国製である。
日常の生活用品や加工食品などは、ほとんどが
ロシア製、中国製のもので、他にも韓国製や日本製のものも
多く見かけられた。そのまま「カレー」と片仮名で記された
レトルトカレーも見つけたし、中国の工場で製造された
「格利高」のアーモンドチョコレート、普段私たちが
親しんでいるあのチョコレートも、袋詰めで売っていた。
階段の踊り場には、昔のコナミのゲームが置いてあった。
これもまた、日本のゲーセンでお役御免になった躯体である。
さらに、お金。モンゴル通貨は「トゥグリク」という。
しかし、実際の流通の場では、この通貨よりも
米ドルの方が、一般的である。まとまった額は米ドルで、
細かい端数はトゥグリクで、と使いわけている。

モンゴル製の品と言えば、まず観光客用の土産物。
民族衣装や、草原の風景を描いた簡素な水彩画、
また壁一面に飾るような大きな風景画なども
売られている。これだけで店舗の1フロア全てを割いているわけだから、
この店にとって、またモンゴル経済にとって、観光がいかに重要な
収入源か、ということが理解できる。廉価な馬頭琴や、口琴も
売っていた。私は、民族衣装の「フレム」を2着購入した。
1着はこの店で、もう1着は午後から行った国営デパートで買った。
こちらもモノ・マガジンのコーナーで紹介しておく。
それから他に、モンゴル製の商品としてはモンゴル焼酎の
「アルヒ」がある。これは、なかなかにうまい酒で
私も3本ほど購入して帰った。

それから、もう1つ目立ったモンゴル製品。
これもひょっとしたらモンゴル製ではなく、ロシアや
中国あたりから流れ込んでいるのかもしれない。
それが、海賊である。CDコーナーにずらりと並んだ、
海外ミュージシャンの海賊版。安い安い。
こんな大きな店舗で大っぴらに売っているところが
面白い。売られているミュージシャンからすれば
大きな損害か、というとそうでもない。並んでいるのは
U2、R.E.M.、エアロスミスなど英米の名だたる
「売れっ子」たちで、元々大儲けしている人たちばかりなので、
モンゴルでの多少の売り上げのロスなど問題にならない。
むしろ海賊版によって彼らの存在が認知されることになれば、
長期的に観ればプラス要素の方が大きいというものである。
同じ売り場には、モンゴル・ポップスのミュージシャン達の、
こちらは正規版のCDや、それから伝統音楽の演奏家の
CDも並んでいた。ネルグイさんのCDもあるらしいが、
ここには無かった。CD売り場の向こうには家電コーナーがあって、
サンヨーの商品がずらりと並べられていた。家電も勿論
全て外国製品であるが、その中でも特にモンゴル進出に
積極的な企業は、どうもサンヨーと韓国のサムソンのようである。
他にも東芝や松下は現地法人を設立しているように見受けられた。

こんな状況だから、帰国後の「ばらまき用」の
土産物が、全く見当たらない。海外旅行で
現地のちょっとしたお菓子や何かを購入し、
帰国してから友人・知人に広く配るというのは
よくやる手法であるが、モンゴルではこれができない。
「モンゴルもの」のばらまき土産を探しながら、
ダザイさんなどは店の中を右往左往しておられた。
結局、適当なバラマキグッズは見つからなかった。
ホルルスラーのおかぁちゃんが大量にアルヒを購入していた。
いったい誰がそんなに飲むのか、ちょっと気になった。
土産物・民族衣装以外でのモンゴルの特産品、
ということになると私が目にしたのは、焼酎アルヒと、
ホテルで売っていた切手ぐらいのものである。本当にそれだけだった。

 

「アヒルはちょっと、イヤだった」
そんな中でもう1つ、例外的な「モンゴルもの」の品が、楽器である。
馬頭琴を初めとする、民族楽器。今度はその専門店に行った。
サガさんも、本場の馬頭琴を購入しようと意気込んでおられる。
いくつかの馬頭琴を試奏してみて、よさそうなものを選ぶ。
弾いているのを横で観ていて、私が「これはよくない」と思った1本を
サガさんも「よくない」ということでハネておられた。
最終的にサガさんは2本の馬頭琴を購入された。

「うぃ〜」は、無し。

ヤマトおかーさんとイマムラさんも、馬頭琴を購入された。
実は私は、あまり擦弦楽器を弾きたいとは思わない。
むしろギターのような撥弦楽器を好むので、ここで
中央アジアの撥弦楽器「ドシュプルール」を購入しようと思っていた。
しかし、店にあるものを見てやめてしまった。デザインに問題があった。
馬頭琴はヘッドの部分に馬の姿をあしらってあるが、ここにあった
ドシュプルールは、それを真似てヘッドに白鳥の頭が掘り込んであった。
しかし私には、その白鳥はどう見ても家鴨にしか見えなかったし、
そのあひるの様子は、まさしく「おまる」のアヒルなのであった。
これでは、購入は断念せざるを得なかった。

製作工房と

おばけ馬頭琴。

この後昼食を食べに行った。韓国資本のフライド・チキンの店である。
「M.F.C.」とあったので、「モンタッキー・フライド・チキン」ではないか、
という予測が日本人の主流を占めた。店内には異様に甲高い叫び声の
音楽が流れていた。喉歌とは別の、もう1つの民族音楽「オルティン・ドー」である。
NHK大河ドラマ『北条時宗』のオープニングですっかり有名になった、あの叫び。
かなり凄まじいものがある。韓国資本の店でアメリカ生まれの料理を食しながら
大蒙古の遥かなる叫びを聴くのは、言い知れない異様な感覚であった。
店内には、その空気を無視するかのように明るい日本語と
いんちきな英語が飛び交っていた。注文などは英語で済んだのである。

 

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