あなたの「メッセージ」をください

そしていたる所で話し合いを


     緊急のよびかけ
画・上山 満雄
 

 心から、あなたに呼びかけます。この半世紀以上を生き抜いてこられたあなたは思い起こしてほしい。戦後生まれのあなたは、ぜひ真剣に耳を傾けてほしい。そして、あなたご自身の思いをメッセージとして寄せてほしいのです。


 この数年、この国を
ただならぬ暗雲が包んでいます。
 日本社会の基盤であり、国民と政府の規範である憲法が、いま風前の灯火です。
 つい半世紀前、日本の国は一度壊滅しました。自ら始めた狂気の侵略戦争で世界から孤立し、(加えて残虐な原爆を浴びて)日本は自滅しました。この戦争で、3百万人の同胞と、2千万人のアジアの人たちが殺されました。
 言語に絶する破壊。混乱と無秩序、飢餓と絶望の淵から再起するため、日本国民は過去の過ちを反省し、崩れぬ平和を渇望して、現在の日本国憲法を確定。不動の「決意」を世界に宣言したのでした。
 「現代の地球上で、もっとも先進的な憲法だ」と、世界に認められ、羨ましがられてもいます。


〈前文〉 日本国民は、……われらとわれらの子孫のために…政府の行為によって再び戦争の惨禍が起ることのないやうにすることを決意し、ここに主権が国民に存することを宣言し、この憲法を確定する。
……日本国民は、国家の名誉にかけ、全力をあげてこの崇高な理想と目的を達成することを誓ふ。

〈第9条〉 【戦争の放棄、戦力の不保持・交戦権の否認】 日本国民は、正義と秩序を基調とする国際平和を誠実に希求し、国権の発動たる戦争と、武力による威嚇又は武力の行使は、国際紛争を解決する手段としては、永久にこれを放棄する。
 @ 前項の目的を達するため、陸海空軍その他の戦力は、これを保持しない。国の交戦権は、これを認めない。

〈第99条〉 【憲法尊重擁護の義務】天皇又は摂政及び国務大臣、国会議員、裁判官その他の公務員は、この憲法を尊重し擁護する義務を負ふ。


  ところが今、
あろうことか政府自身が、この憲法をかなぐり捨てようとしています。99条には「国会議員はこの憲法を尊重し擁護する義務を負ふ」と定められているにもかかわらず。
 憲法がはっきりと禁じている海外派兵を強行し、さらに憲法条文の書き変え準備を、政府と与野党(自民党・公明党、民主党も)あげて、急ピッチで進める事態になっています。小泉首相は「2005年を目処に改定案を出す」とまで公言しました。


 この事態は、国の内外に衝撃を広げています。去る6月10日には「日本の良心」ともいうべき文化人が、「もはや沈黙は許されない」と声をあげ、『9条の会』を発足させ、活動を開始されました。
大江 健三郎(ノーベル賞受賞作家)、三木 睦子(三木武夫元首相夫人)、梅原 猛(哲学者)、小田 実(作家・評論家)、井上 ひさし(作家)、加藤 周一(評論家)、澤地 久枝(作家)、鶴見 俊輔(評論家)、奥平 康弘(東大名誉教授・憲法学者)の諸氏です。

 まさに「日本の良心」の、やむにやまれぬ決断。勇気ある行動。歴史に大書される出来事であり、多くの国民を励ます快挙。日本の良識が危機感を持ち、命をかけて行動した「時代への警鐘と励まし」です。
 私たちは、これら日本の知性を代表する方々の呼びかけに応え、これまで粘り強く続けられてきた護憲の運動の智恵と経験を結び、暗愚と無法の逆流を食い止めるため、一人一人が自分の意志を表明し、行動したいと思います。

 
良識あるはずのマスコミにとっては、これは重大ニュース。実際、「9条の会」の記者会見には、主要メディアの記者が約80人も駆けつけました。

 ところがテレビも新聞も、ほとんどこれを報道せず、無視しました。非戦・反戦の運動を黙殺することは、戦争放棄の誓いを破り捨てようとする動きに加担することではないでしょうか。
 (もちろんマスコミ各社には良心的な報道を実現しようと献身している優れた記者が少なくないのですが、それら貴重な仕事は、片隅の紙面や深夜番組に追いやられ、国民の目に届いていないのが実情です。)

 すべての人の平和に生きる権利を守り、恒久の平和を実現する上で有意義な情報を、伝えようとしないマスコミ。それは国外の、たとえばローマ法王庁の教皇ヨハネ・パウロ2世の働きについても言えます。
 そのバチカン国代表が、早くに「国連」の安全保障理事会で呼びかけました。
(まず過去の永い歴史の中でカトリック教会が戦争に対して誤った態度をとった事実を認め、謝罪した上で)「戦争は人間性の敗北である。神のご意思にも反する。イラクへの先制攻撃に大義はない。戦争は何も解決しない。冷静にお互いに耳を傾け合おう!」
 これは、平和を求める世界の各国民に深い感動を広げました。

 教皇はただ訴えただけでなく、枢機卿や大使を各国へ派遣し、自らも各国へ働きかけ、良識ある宗教者として精一杯の警鐘を繰り返し鳴らしています。
 それでもアメリカ政府は、イラクへの先制攻撃・空爆・侵略を強行したのです。
 教皇がさらなる戦争拡大を何とか食い止めようと、今もなお懸命に努力している事実も、日本のマスコミはほとんど報道していません。
 武力による威嚇や武力の行使が世界の平和を崩すのです憲法9条を高く掲げて世界に真剣に訴えることこそが、「国際社会で名誉ある地位を占める」道であり、真の国際貢献への道なのです。ローマ法王の働きを報道しないことも残念なことです。

 日本の報道の深刻な状態については、著名なジャーナリスト・本多勝一氏(元朝日新聞編集委員)も強く指摘しています。
 「国連を無視したブッシュ政権の明白なイラク侵略を、〈侵略〉と表現した日刊紙が『赤旗』しかなかったことに象徴される状況に、真のジャーナリズムをどうして期待できようか。……」
(週刊『金曜日』04.6.11付 「日本人の地金」より引用)

 実際、かなり以前から、少なからぬ新聞社、テレビ局が、社説で「憲法改定」を公然と主張してきました。
 この状況を黙認すれば、次にくるものは、「憲法改定」、そして「徴兵制」です。

        
          画・自画像「怒り」 shiba soh

 この数ヶ月、ニューヨークでもロンドンでも、オランダでもインドでも、世界の都市でアメリカのイラク攻撃に対する10万人を超える規模の反戦デモが展開されていますが、日本の新聞・テレビでは、ほとんど報道されていません。
 国連のアナン事務総長も9月15日、「ブッシュ政権のイラク攻撃は国連憲章に照らして違反である」(英BBC放送のインタビュー)と発言。その後9月22日の国連総会の冒頭演説でもアメリカを批判しています。

                                             ( つづく )


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