CD試聴記
【02/28 ウィーン弦楽六重奏団のチャイコフスキー】
2005年夏、本当に惜しいことに、現代最高の室内楽演奏団体のひとつ、ウィーン弦楽六重奏団が解散した。モザイク四重奏団のリーダーなどとしても知られるエーリヒ・ヘーバルトを中心に、しなやかでのびやかなアンサンブルを聞かせてくれた彼らが、活動の最後にPan Classicsに残してくれたのは、シュトラウスのワルツ&ポルカ集、チャイコフスキーの「フィレンツェの思い出」とR=コルサコフ、そしてブルックナーの弦楽五重奏曲&ワーグナーのヴェーゼンドンク歌曲集。そのどれもが、彼ららしい、あたたかな弦の溶け合いを聞かせてくれている。チャイコフスキーの佳曲「フィレンツェの思い出」では、緊密なアンサンブルのなかに、やわらかな光が満ち溢れ、イヤな音ひとつしない美しい弦楽合奏が展開されていく。最終楽章のフーガで、のびやかに歌われる旋律の曲線が優雅に絡み合い、かろやかに刻まれるリズムが躍動すると、チャイコフスキーが思い描いたイタリアのまぶしい風景が、強烈に胸をしめつけて、「ああ、これが彼らの最後の録音なんだなぁ」となんともいえない気持ちになった。Pan Classicsの3枚は、ウィーン弦楽六重奏団という稀有なアンサンブルがこの世に存在した証として、末永く大切に聞いていきたいアルバムだ。
[Pan Classics 10173]
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