三龍戦騎


啓玉闘義ルール

●啓玉闘義とは

 啓玉闘義(けいぎょくとうぎ)ルールとは、通常、絶対的に交渉が成立しない種属間対立において、マブイモチによる交渉を可能とする規則をいう。異種属間の重要な交渉において用いられる交渉ルールの一種だ。

 ■ナギビト
 マブイモチほど龍魂能力が高くない、三龍共榮圏におけるいわゆる一般民衆は、ナギビトと呼称される。
 アラガミ師は、例外なくマブイモチであり、ナギビトは存在しない。
 その他の種属については、トモガミをもたないナギビトが、NPCとして普通に存在する点に、注意すべきである。
 啓玉闘義は、ナギビトやファーグニル連合人種との間では行えない。

 ■神義と啓玉
 本作に登場する各種属は、伝道者によって刷り込まれた、あるいは伝統文化により強固に保持される信念、「神義」を有する。
 神義は、それぞれの種属の本能、あるいは絶対に侵すことのできない強固な教義というべきもので、この星における民族紛争は、殆どの場合、神義を互いに侵したことによって生じている。
神義に抵触する問題が論点となる場合、啓玉闘義による場合をのぞき、絶対に交渉は成立しない。

 したがって、ナギビト間で神義に抵触するような深刻な対立が生じた場合、武力行使か、諦めて相手の要求を受け入れるか、お互いを無視するぐらいしか解決策はない。

 ただし、そうした場合、ナギビトは、神義に抵触しない論法での交渉を試みるか、マブイモチを代理人として選び、啓玉闘義によって対立を解消してもらうのが普通だ。

 啓玉(ケイギョク)とは、マブイモチのみがもつ龍魂の結晶体である。
 マブイモチが出生したときに、トモガミの体組織の一部とマブイモチの体組織の一部や血液などから練り上げられ、精製される、勾玉のような宝珠である。マブイモチは、必ずこれを携帯している。

 啓玉を使うことで、異種属の神義に抵触する論点についても、交渉が可能となる。

 通常は、異種属の考え方は異質すぎて、言語や視覚といった通信手段によって相互理解することは難しい。しかし、マブイモチの体内にある龍魂体が発信する高密度の信号により、他種属の思考過程を直接、脳神経系に入力・出力することで、異質な価値観についても、相互理解が可能となるのである。

 様々な種属が存在する共榮圏において、内部に紛争を抱えながらも、どうにか国家連合が成立しているのは、マブイモチと啓玉によるところが大きい。

 その意味で、マブイモチは共榮圏の根幹を支える人々であり、武力面としてだけでなく、異なる種属の意思を統一するという面においても、マブイモチの存在があったからこそ、三龍共榮圏が存在しえた、といえる。

 ■神義による種属特性の再現
 PCは神義を守るように行動することで、その種属らしいロールプレイが可能となる。
 神義には、種属の特徴を再現する意味もある。
 本作の参加者は、ロールプレイにおいては、神義をきちんと守った上で、さらにPCとしての個性を演出するよう心がけると、三龍戦騎らしいセッションが実現できよう。

 ■神義に反するロールプレイ
 GMは、セッション中、PCが、その神義に抵触する「その種属らしくない」行動をとった場合、その行動や発言を中止させるか、あるいはその行動の効果を無効としなければならない。
 ただし、啓玉闘義で負けた結果、自己の神義を曲げねばならない事態に陥った場合は、仕方がないので、その効果は有効とする。

 何をもって「その種属らしい」と解釈するかは、参加者の間で意見がわかれた場合、一通りの意見を聞いた上、GMが最終決定する。

 ■啓玉闘義とキズナ判定
 啓玉闘義に参加したキャラクターは、勝ち負けにかかわらず、キズナ判定が可能となる。

 ■GMへの助言
 啓玉闘義は、重要な交渉シーンであると同時に、戦闘が不得手なキャラクターでも武魂をためることのできる機会でもある。
 戦闘以外のイベントで、PCに武魂を得させたい場合、シナリオ段階で啓玉闘義を用意しておくとよい。

 GMは、啓玉闘義を想定する場合、シナリオ段階で、神義に抵触するようなイベントを用意すること。
 神義の対立をドラマ上の「核」としてシナリオを作ると、三龍戦騎らしくなる。
 その際、PCが啓玉闘義に失敗した場合の選択肢や解決策も用意しておく必要がある。

 ■神義の弊害と注意点
 啓玉闘義は、重要な交渉場面で使うルールである。したがって、重要でない場面では、細かく闘義をすべきでない。
 キャラクターが、あまりに神義を厳格に守ろうとすると、啓玉闘義が多発し、日常会話すら成立しなくなるおそれがある。
 セッション進行の妨げとなるほど神義を細かく適用すべきではないので、GMは、適宜、参加者にそうした助言を与えること。

 民族紛争を抱える種属間の会話であっても、日常会話レベルでは、いちいち深刻な争いにまでは発達しないのが普通である。

 PCが武魂をためるべく自発的に啓玉闘義を試みることも可能だが、GMは、啓玉闘義がその場面では不要、あるいはストーリー展開上、冗長になると考える場合、神義に抵触しない論法による通常の交渉判定に誘導するか、交渉の打ち切りを決定することもできる。

 同じ論点が問題となっていても、言い方次第で、相手の神義に抵触しないように話をもっていくことができるという点を忘れてはならない。
 闘義を避けて通常の交渉にもちこみたい場合に重要な手法である。

 ■交渉と啓玉闘義の関係
 ある論点について、交渉判定によって結論がすでに出されている場合、同じ論点について啓玉闘義を重ねて行うことはできない。
 また逆に、すでに啓玉闘義によって結論が出されている論点について、交渉判定によって再度判定を行うことはできない。
 同じ論点について二回も判定を行うのは煩雑だからである。
 その後のシナリオ進行により、交渉または啓玉闘義の前提となる条件が変化したり、新たな提案が出された場合は、GMが認めれば、同一論点についても交渉または啓玉闘義が再び可能となる。

 交渉中に、神義への抵触が生じた場合、直ちに啓玉闘義に移るものとする。

●手順

1.啓玉闘義は、異種属間で重要な対立が生じている場面で、これを武力以外の方法で解決するために行う。
 話し合い中、参加キャラクターのいずれか一方、または双方の神義に抵触する意見が出た場合、ナギビトに対して、あるいはナギビト同士では、交渉判定を行えない。

2.神義に抵触する議論であっても、交渉するキャラクターが双方ともにマブイモチであるなら、啓玉による意思疎通が可能。闘義は、部隊の代表者どうしで1対1で行う。代理人として啓玉闘義を行う場合は、代理人ではなく本人の神義に基づいて交渉をすること。

3.交渉を行おうとするキャラクター双方が、啓玉闘義を行うと合意したら、それぞれの「龍魂」値により、攻撃と防御を同時に行う。これは即決判定であり、主導権判定は行わない。関連技能を判定値に加算してよい。
 プレイヤーは、最初の1回目の龍魂判定については、具体的にどういう提案や主張をするのか、発言しなければならない。
 具体的な発言がない場合、即決判定に勝っても効果は生じない。
 発言には、必ず、自分の種属の神義熟語のうち、最低でも二文字を台詞に含め、相手を論理的に説得すること。

 あまりに論点からかけ離れた主張は、GMの判断により無効としてよい。その場合、無効な主張をしたキャラクターは、自動的にその回の判定に失敗し、和魂にダメージを受ける。

4.3の判定の勝者は、そのターンごとに、彼女の龍魂値に等しいダメージを、敗者の和魂に与える。通常戦闘ルールと同様、大打撃も生ずる。

5.以後、龍魂での判定を繰り返す。2回目以降は、神義熟語にもとづくロールプレイは不要。
 結果、和魂を0にされたキャラクターは気絶し、目覚めた後、相手方の条件を受け入れる。

6.相手の提案を受け入れるならば、啓玉闘義を中止することもできる。和魂を天華法などに使いたい場合、啓玉闘義で和魂を消耗しすぎるのは得策ではないだろう。

7.啓玉闘義に参加したキャラクターは、戦闘終了後、勝敗にかかわらず、キズナ判定が可能である。啓玉闘義においては、ゲキの龍魂体が最大限に活性化するからである。(啓玉闘義後は、多くの場合、トモガミも興奮状態になる)

●各種属の神義熟語

 各種属が守るべき戒律や絶対的信念を、四字熟語で表現したものを神義熟語という。
 システム上の概念・名称であり、劇中世界に登場する名称ではない。
 以下の一覧では、神義熟語の内容を短文で説明してある。

 神義熟語は、本来、それぞれの種属の教典に教義として記されていたり、慣習法や口伝によって伝承されていたりするものである。
 異種属と重要な会話をする際には、相手の文化や宗教に、十分配慮して発言しなければならないことを表現する規則だ。

 神義は抽象的なので、色々な解釈が可能である。それゆえ、種属間の対立の火種となる。また、解釈には個人差がある。

 セッション中、キャラクターの行動や発言が神義に抵触するかどうかの解釈の最終決定権は、GMにある。
 GMは、神義の解釈について、参加者の意見を尊重すること。

 【神義熟語 一覧】

 アラガミ師
●<護龍敬神> 善なる竜、ウタキ、祖霊、自然の精霊を崇めるべし
●<臣民守護> 民を守るべし
●<五属共榮> 異種属との共和を尊ぶべし

 シンテツ
●<母星到達> 故郷の星を目指すべし
●<機械守護> 機械文明圏の樹立を目指すべし
●<狂骨打破> キョウコツを討つべし


 星覇
●<森獣守護> 森や自然を守るべし
●<歌踊創恋> 謳い、物語り、恋すべし
●<対阿不屈> アガニ属に屈すべからず

 カワアガニ
●<守銭商励> 商いに励むべし
●<自己立脚> 他より己を信ずべし
●<対星不屈> 星覇属に屈すべからず

 ガルナス・メイ
●<龍神崇拝> 龍神ガーグ・ラナンガを崇め、愛機を龍王機へと近づけるべし
●<大群尊重> 個より群れを貴ぶべし
●<対打不屈> ダガン属に屈すべからず

 ガルナス・ダガン
●<士道堅守> 士道を尊ぶべし
●<弱者守護> 弱き者を守るべし
●<対明不屈> メイ属に屈すべからず

 天魂
●<星界到達> 星界への帰還を目指すべし
●<知略尊重> 武力より知恵を尊ぶべし
●<窮者保護> 傷ついた者、困っている者を救うべし

 以下はNPC種属の神義熟語

 トオミ
●<聖地守護> 聖地を守護すべし
●<遺跡守護> 伝道者の遺跡を聖地として守護すべし
●<実力防衛> 防衛のために武力行使を惜しむべからず

 ギョクガセ
●<蟲鬼守護> 蟲鬼を守護すべし
●<蟲鬼交易> 蟲鬼の交易を推進すべし
●<蟲鬼開発> 蟲鬼の品種改良や研究に励むべし

 ウミアガニ
●<海洋制覇> 海洋世界の覇者たるべし
●<外敵捕食> 敵を倒し、食らうべし
●<男性捕食> 雄を支配し、食らうべし

【絶対神義熟語 一覧】

 ファーグニルと共榮圏の各種属には、啓玉闘義すら不可能な、絶対神義というものがある。
 これを侵す行動については、戦闘か、その論点を回避しての通常の交渉による以外は、解決方法はない。
 ファーグニル系人種には龍魂がないため、啓玉闘義もできない。
 共榮圏とファーグニルの峻烈な対立関係を表現するためのルールだ。

 共榮圏
●<赤嵐防備> 赤の嵐に備えるべし
●<伝道崇拝> 伝道者をあがめるべし
●<五属共榮> 異種属との共和を尊ぶべし

 ファーグニル連合
●<純血堅持> 祖なる地球人類の純血を守るべし
●<惑星制覇> 天体アマミツヨの覇者たるべし
●<唯一崇拝> 唯一神ファフニルを崇拝しべし

●闘義助言

 複数キャラクター間で論争が起こっている場合でも、啓玉闘義は1対1で行われる。
 通常は、多数決でそれぞれの勢力の代表者あるいは代理人を1名ずつ選出する。

 NPC同士の間で論争が生じている場合、PCがどちらかの代理人として啓玉闘義を行うことが可能だ。

 法部御殿(のりべうどぅん)での民事裁判ではない私人間の調停や、ウツロヒの冒険における啓玉闘義では、その場のノリや勢いによって、多数当事者間の啓玉闘義が勃発することもある。

 その場合でも実際の闘義を行うのは1名ずつの代表者マブイモチによるが、
 代表者でないマブイモチは、「助言」することができる。
 味方代表者が発言する前に、神義熟語を用いた助言のロールプレイを行い、それが「適切な助言・加勢になっている」とGMが判断した場合、代表者の龍魂判定について、一人の助言につき+1の修正を得る。これを闘義助言という。
 使用する神義熟語は、代表者と同じものでもよい。但し発言内容は異なるものである必要がある。
 闘義助言は一回の闘義について一人一回のみ可能。

●啓玉に関する技能

 以下の技能を基本ルールに追加。すべて共通龍魂技能である。

【啓玉激昂】
啓玉闘義において、敵キャラクターの和魂に与えるダメージを技能値分、増加させる技能。

【啓玉黙考】
啓玉闘義において、敵キャラクターの攻撃で受ける和魂ダメージを技能値分、減少させる技能。

【啓玉戦技】
啓玉闘義の即決判定において使用できる技能。技能値を闘義の即決判定で加算できる。

●啓玉闘義の事例式演習

 【事例】
 星覇「光風」は、星覇王国ニャラカ村に居住するウツロヒである。
 カワアガニ「セルル」は、ニャラカ村近辺の大紅樹林に生息するオオマクガンの甲殻が、医薬品の原料として高く売れると考えた。
 セルルもマブイモチである。
 セルルは、ニャラカ村の星覇らに無断で、重火器を用いてオオマクガンの野生個体を多数射殺した。その甲殻を剥ぎ取り、央天青で販売するつもりなのだ。
 光風は、セルルに対し、オオマクガンの密漁を止めるよう要求したい。オオマクガンは星覇にとって大切な生き物なのだ。
 武力行使以外の方法による場合、光風は、セルルに対し、どのような根拠にもとづき、どのような話し合いをしたら良いか。

 <模範解答リプレイ例>

GM:光風は、そのカワアガニ少女に密漁を止めるよう頼むんだね。まずは交渉から?

光風:うん、交渉判定で上手くいくならそれにこしたことはないです。和魂を温存しておきたいし、龍化されたら大変ですし。
「密漁なんてやめて、わたしの村でお魚でも売ってみたら儲かるよ?」

セルル/GM:「あほ猫が。ンなちんけなことやってられるかいな。森を伐採して大マクガンを根こそぎ売り払ってやるんや!」

光風:それは星覇の神義<森獣守護>に抵触するでしょうね。交渉できないので、胸の啓玉をつかんで、闘義を申し込みます。
「わたしたちの<森>は絶対に<守>るんだから! マクガンさんをいじめないで!」

セルル/GM:相手も闘義に応じる構えだ。龍魂で判定だ……こちらは合計8。
「<商>売に<励>んで稼ぎまくる、それがうちらアガニの生き方や!」と、<守銭商励>で対抗する。

光風:龍魂判定、合計10です。1回目は勝ったようですね。こっちの龍魂値は3なので、防御点が無ければそのままセルルの和魂への打撃となったはず。

セルル/GM:君の龍魂の波動を受けたセルルは、思考に衝撃を受け、呻く。
「くう、やるやないか。けどこれでどうや? うちらの思いを受けてみい!」
 2回目以降は、龍魂波のぶつけ合い、つまり圧縮言語で決着をつけるから、ロールプレイ不要で判定だけで処理する。まずは……。

(中略。光風の龍魂の強さはセルルのそれを凌駕し、セルルは気絶寸前まで追い込まれた。)

セルル/GM:かなわないと見たか、セルルは光風の主張を受け入れるようだ。ふらふらになっている。
「わ、わかった。じゃ、あんたらの飼ってるマクガンのうち、要らないのを譲ってくれんか? 金も払うで」

光風:それでいいです。「うん、いいよ!」

GM:闘義は終了だ。セルルは光風の主張を理解し,受け入れたようだ。キズナ判定よろしく。環境は……。



追補目次へ

表紙へ

清水三毛 2008.12.14.