天狗の宿 1

雑誌/単行書/その他 探索ノート
雑誌/単行書/その他、目下探索中です。
メモがわりに書いておこうと思います。
天狗の宿の寝物語です。
つい寝ぼけたことを書くかも知れません。

「スカラベ広場」(掲示板)にて、いろいろと情報をお寄せください。



●「残波」
 縮刷復刻版『沖縄新民報 附「自由沖縄」』(不二出版、2000)を眺めていたら、新聞「自由沖縄」第17号(昭22.11.5)の広告欄に「残波」というのが載っている。沖縄本島の残波岬からとった誌名だろう。「郷土の香り高き唯一の沖縄文化誌」とあり、第4号発売中という。発行元は熊本市紺屋町二ノ三七 残波編集部。投稿歓迎、新会員募集中、会員月額二十円とあるから、会員制投稿誌だったのか。戦争末期、例の対馬丸遭難事件で知られるとおり、沖縄からは強制的な学童疎開その他で九州各地にたくさんの沖縄の人たちが疎開していた。この人たちによる戦後まもなくの雑誌なのか。そんなに多くの部数が発行されていたとも思えないが、それにしてもただの一度もこれを見かけたことがないのはなぜだろう。ひたすら捨てられつづけたに違いないのだが、それにしてもいまいましいのは図書館員の見識というヤツだ。古本屋は商売だから、売れないのは捨てる。家庭は生活上に必要ないから、これも捨てる。これらは仕方がない。しかし図書館員は書庫の狭さを理由に、おのれの見識でもって処分する。その結果、全国均一蔵書だけが残る。彼ら/彼女らの見識の結果、どこの図書館にも「残波」は残っていない。しかし、図書館員は、まあ素人が多いから半分は仕方がない、となれば古本屋の半分は、まあ玄人なのだから、玄人なら商売一辺倒じゃなくて一棚くらい「見識棚」を持っておくのが古本屋の良心だろう。と、まあ、これ自己責任の回避につとめるのが古来、学者ってもんだ。「残波」がないのは、だから仕方がない。でも、見たいなあ…
(2000.10.10)

●「九州文壇」
 古書店S堂でビニール袋入の文芸雑誌「九州文壇」創刊号を買った。戦前の福岡で出ていた文芸同人誌「九州文壇」なら知っているが、戦後の雑誌「九州文壇」は知らない。店内のかたすみにぽんと置いてあって「1500円」の古書展用の値札が入っている。この値段でいいんですかと問うと、昔のままですがいいです、――というわけで、こういうときはわざとビニールから出さず、他の本と一緒に持ち帰った。自分を楽しませる術というべきか。帰宅して開封したら、「佐賀県東松浦郡厳木村 九州文壇社」の発行。編集人は古賀芳雄、発行人は古賀鶴松。昭和21年7月15日の発行。短歌と詩と小説が掲載されているが、どうもわたしでも知っている程度の有名人はいない。わずかに吉田真之助という人が「鳩笛」という9ページ半ほどの小説を書いているが、たしかこの人は唐津あたりの人で、いつかひの人の単行本小説を買ったことがある。どこかにあるだろうが、いますぐ取り出してみる気にはならない。
 裏表紙には「九州文壇同人会」の「(趣旨)」があって、「従来ノ封建的文学性ノ打破、新人ニ全紙面ヲ開放シ新人ノミノ同人雑誌ヲ刊行、以テ新人ノ登竜門タラムコトヲ期シ、飽クマデモ純文学ノ名に相応シキモノヲ推進シ相倶ニ新日本文化ノ建設ニ邁進スルニ存り。」とある。いかにも戦後らしい紋きり型の宣言だが、こういう文章を書く人は、戦争中は戦争中らしい紋きり型の文章を書く人なのだ(ろう)。裏表紙にはまた、「近刊予告」として俳誌「虹」八月創刊と「九州文壇詩選」八月中旬発行。「続刊」として「九州文壇小説選」の広告が載っている。いずれもまだ見たことがない。「創刊の辞」は宮純之助という人が書いているから、この人が中心人物なのだろう。「こゝに「渓流」と「海原」を合併し、「九州文壇」は生れた」とあるから、「渓流」と「海原」という雑誌も、いつか見てみたい。それにしても、「九州文壇」の2号以下も、俳誌「虹」も、「九州文壇詩選」も、「九州文壇小説選」も、ぜーんぶ見たことない。
(2000.9.23)

●「九流」
 年に1度か2度しか行かない古本屋の、へんな場所にまぎれるようにしてあったビニール入りの雑誌。「九流」創刊号とあるが、未見未聞の誌名。2000円って高いよなあと思いつつ、他の本と一緒に一括購入。帰宅途中に眺めたら、昭和14年11月10日の発行。編集人は野田茂。小倉市弁天町二丁目二二五四 九流社 発行人は増田耕一。発売所は小倉宝文館(小倉市錦町通り)。全163ページだから、そう薄くはない。巻頭言によると、「八つの流れがあった、/舞踊、音楽、絵画、文芸/演劇、建築、彫刻、映画と――/そして今/混濁した世界のドン詰りは/新しい出発点になりさうだ/新しい思想!/新しい道徳!/新しい力!/そこに九番目の水源がある。/(略)」というのが、どうやら誌名の由来。片岡繁男が参加しているのが目をひく。表紙を開くと扉に全ページ大で、「近刊詩集 片岡繁男作品 喜劇役者の殉死」とある、「初冬上梓の予定 九流社」とあるから、こんな詩集が出たんだろうか。
 創刊号(第一巻・第一号)の目次を紹介しておこう。

巻頭言
評論
 映画批評への反省                      山口 澄   1
 映画の地位                            増田耕一 13
 レコード・映画・演奏会                     野村晃作 22
伝説(※小説)                             調 作馬   33
―詩―
 月下香                               片岡繁男 31
 風景                                 片岡繁男  65
 魚群                                 黒木康友 106
映画ファンの日記から(※コラム)            野田 茂  39
鶏の神話(※コラム)                     赤阪門平 67
カット!!(※コラム)                    増田生     30
創作
 蓄妾税                            舟木耕助  41
 夏すぎて                           尾花 伝   50
 美はしきかな林檎のへそ―耕助の手帖から―   片岡繁男  68
 稚い魂                           田木 清   90
 共存社陰翳記                       埴科三郎110
編集後記

(2000.9.22)

●渋谷栄一『詩壇人国記』(交蘭社、昭8.1)
 先年、この本を古書展で手にしたときは興奮したが、その後、古書目録を気をつけてみていると、ときどきある。さしてめずらしい本でもなさそうだが、同書の後記によると、詩誌「愛誦」に昭和6年4月より7年12月まで連載したものに「多大な補修改訂を加へ」たとある。日本全国、各県別に明治以降の詩人たちを紹介し、また同時代の詩人たちの動向をしるしたもので、知ってる名前もたくさんあるが、知らない名前もたくさんある。
 巻頭は「九州の巻」。沖縄県も含めて全24ページほどの分量で紹介されている福岡県では。「先発隊」の原田種夫、星野胤弘、山田牙城あたりはわかるが、「衆像」の今井慎之介、渋谷潤はだいぶんあやしくなり、「桂冠詩人」の城後更正(「黒薔薇」の著者)とか後藤加奈緒(「煙と笛」の著者)となると、もうわからない。沖縄県も伊波南哲とか山之口貘ならわかるが、山口芳光、有鳥潤、有馬潤、国吉灰雨となると、もうわからない。
 これの著作権が切れているなら、このサイトにデータ・ベース化したいと思っている。けれども、ああ、ここでもまた全24ページをデジタル化する作業が壁のように立ちはだかっている。スキャナを使っても、これを修正するのが大変。でも手打ちよりも楽だと思いつつ、やはり思うのは、ああ、ヒショが欲しいなあ、ヒショとヒショヒショやりたいなあ。これをやっても、世の中の迷惑にはならないと思うんだけどなあ。
(2000.9.20)

●総合文化誌「青い海」
 ふと書棚で目についた田村紀雄『日本のリトルマガジン』(出版ニュース社、1992.3)をつらつらと眺めていたら、月刊文化誌「青い海」のことが6ページほど書かれている。「青い海」は1971年4月の創刊。発行元は、大阪市北区のオキナワ通信社内「おきなわ出版kk」(翌年から「青い海出版社」)。沖縄本島北部に近い伊江島出身の山城賢孝が頑張り、執筆陣は大城立裕、島尾敏雄、太田昌秀、尾崎秀樹、本多勝一、佐木隆三、新川明ら。大阪の発行だが、沖縄民衆のための雑誌として創刊されたという。神戸―沖縄航路があるため、沖縄の人たちは関西に多く住んでいる。版画家の儀間比呂志もその一人だ。沖縄返還は1972年だから、創刊はこの前年にあたる。
 この「青い海」は以前、東京高円寺にある「球陽書房」で全冊揃いを買った。球陽書房の老店主氏は、よくネーネーズのレコードをかけながら、三線(さんしん)を弾いている。沖縄では三味線のことを「サンシン」というのだとモノの本には書いてあるので、現地でこう言うと、たいていの人は怪訝な顔をし、「ああ、しゃみせんね」とうなづく。とても体裁が悪い。
 「青い海」は100冊以上あると思う。総目次を作成したいと思うが時間の余裕がない。すでに総目次はあるという説もあるが、よくわからない。あるかないか、どうやって調べたらいいんだろう。雑誌はいまだビニール紐でくくったまま眠っている。誰か総目次を作成してくれたら、インターネットで全世界に公表し、10年に1人いるかいないかの利用者を待ちつづけるのに。
(2000.9.16)

●詩誌「浪漫」
 戦後すぐ北九州で創刊された詩誌といえば「FOU」(のち「鵬」と改題)があるが、これは日本全国で戦後最初に出た活字版詩誌として有名。同じ頃、ガリ版刷の詩誌「浪漫」が、同じ北九州(八幡)で出ている。わたしは1冊しか持っていないので、全部で何冊出たんだろうと思っていたら、つい最近、何かの本(手元にある本だが、何だったか忘れた!)に表紙写真が載っていた。たしか4冊か6冊くらいあったような気がする。「現物」が揃うにこしたことはないが、せめて読めればいいのだからコピーで十分。それが無理なら目次だけでもわかるとありがたい。もし、お手元にお持ちの方、目次のコピーだけでも、いただけないものか。
(2000.9.16)