刃物その四

そういうわけで、刃物その四はヤスリ、キサゲなどです。

例によって例のごとく、皆々様の日常会話での知ったかぶりやスノビッシュな教養ひけらかし、はたまた、先生方のまじめな講義における効果的な前振りや余談、ハッタリかましなどにご活用していただけますよう、毎回心血を注ぎ全力を尽くしてお届けしておりますお役立ち系与太話は、いつものように蘊蓄参考リンク余談、それぞれの項にまとめてありますので、どうぞご利用のほどを。今回の蘊蓄は古典文学的教養があふれとります。

前置きはこれくらいにして、まずは手持ちのヤスリから、といきたいところですが、今回は蘊蓄とその関係の余談だけで力つきました。道具の詳細と余談、参考リンクは次回のおたのしみということで・・・   

(2001.10.1)

というわけで、その次回となりました。

いよいよ、道具のご紹介です。今回はヤスリと味噌との深い関係なんて話もありますのでご期待の程を。キサゲの蘊蓄についても追加情報がありますので是非ご覧ください。

 

大物工作用の木工、鉄工ヤスリ類です。

ヤスリのブランドはニコルソンに限る、というのがその筋では常識のようですが、新たに買い直すのも面倒なので、手元にあったものをそのまま使い続けています。ニコルソンはどんな切れ味なんでしょうね?

一番上は木工用の荒削り用ヤスリ。金鋸の刃を束ねたような構造です。

2番目はオバーグの単目と復目が表裏それぞれに刻まれているもの、4番目もオバーグの単目です。このメーカーのものは、目の角度が45度くらいあって他のメーカーのものよりきついので材料が逃げる様に思えるのですが、実際に使ってみた範囲では特に問題はないようです。

ほかのものはむかしむかしに荒物屋さんなどで買った日本製のもので、メーカー不明です。細目の復目平ヤスリと鋸の目立てヤスリです。これは最近まで単目ヤスリの替わりとして使っていました。

一番下のオレンジ色のは、裏側の平面がおろし金状になっていて、サンドペーパーをブロックに張ったものと同じ様な使い方をします。

平ヤスリは買ってきたままでは、コバに目を立てたときのカエリがでていて、そのまま角の部分をやすると食い込んで直角にやすれなかったり、面をひどく傷つけたりするので、砥石をあてて、けずりとっておきます。グラインダーなどでやれば簡単なんでしょうが、普通の砥石でも十分です。

もちろん、コバに目が刻んである物はこんな事をする必要はありませんが、グラインダーなどで目そのものを削り落としたり、ヤスリの幅をかえたりすることもできます。

このコバの処理をしたヤスリは使い心地抜群で、いっぺんに腕が上がったような気になります。自分で加工したものはすごく良いという、実に手前味噌的な発想ですが、この味噌と言う言葉、おもしろいことに、ヤスリに大いに関係があるのです。味噌とヤスリの関係は、長くなるのでこちらにまとめておきました

精密加工用ヤスリ。

左は12本組、真ん中は平ヤスリ、右は18センチの5本組(丸、四角、三角、甲丸、平角)の棒ヤスリです。

組ヤスリというのは、おのおの異なった形状のヤスリを組み合わせて一組としたもので、普通は5本組、8本組、10本組、12本組があるようです。

18センチのは、なんと、小学生の頃、プラモ屋さんで買ったものだから、かれこれ35年以上前の物です。さすがに切れ味がわるくなり、平角だけは新しいのを買い足しましたが、いまだにしつこく使ってます。

12本組は3年ほど前にホームセンターの安売りで手に入れたもの。それでも一応の役には立ちます。

大物工作用のヤスリのところでも触れましたが、コバにカエリが出ているのでそのままつかうと、特に角の部分など綺麗にやすることができません。鉄道模型の工作などでは、窓の仕上げなどをするのに、ヤスリを調整しておくことは必須です。

こういう細目、油目のヤスリは、ホワイトメタルやハンダなどを削るとすぐに目詰まりをおこして切れなくなってしまいます。この目詰まりを取るには、真鍮ブラシなどを使えと、ものの本には書いてありますが、そんなものでは到底とれません。

私が使っているのは、ガムテープ。これをべったりとヤスリの面に張り付けて、勢いよくはがすだけで、つまった金属屑がおもしろいようにとれてきます。

でも、これでもとれないくらい固くこびり付いたものは、針の先で、目に沿ってなぞるように掘り起こすしかありません。

ハンズなどでは、ヤスリの目詰まりを取る剣山の様なブラシも売られていて、これは針で掘り起こすのと同じ様な原理なので、具合がよいのではと思いますが、よく観察してみると、それぞれの針の頭は直角に切り落とされているだけで、せいぜい細目ヤスリの掃除が限界のようなので、いまのところ買うのを見合わせています。

 

サンドペーパー類

左から普通の紙やすり、耐水ペーパー、布ヤスリ、ラッピングペーパー、ポリネットペーパーです。ペーパー類の種類とその特徴はこちらにまとめておきましたので、ご覧ください

おもに使っているのは耐水ペーパーで、これは本当は水に濡らして使うと目詰まりしないのですが、使う頻度も少ないし、めんどうなので、空研ぎしては使い捨てています。古いペーパーをなんども使い廻しすると、汚れがついたり、きれいに研げなかったりしてろくな事はありませんので、決してケチらないことです。

ペーパー類は間に合わせには必要分だけちぎって使っていますが、まじめに使うときや精密な加工には、プラ板や木片などに両面テープで貼り付け、板ヤスリとして使います。平ひも状のプラスチックや丈夫な布などに張り付けたものを糸鋸の弓に張ると曲面をヤスリ掛けするのにとても便利です。フレキシブルヤスリとか言うなまえで同じ様なものが市販されています。

キサゲ

本来の機械加工では、手仕上げで精密な平面を出すために使われるものです。もちろん、わずかな凹凸ができますので、これで油だまりを形成するなんて用途にもするようです。

キサゲ処理を施した痕の模様は、芸術品ともいえるくらい美しいのもあって、ただ装飾のためだけにキサゲ処理をすることもあるそうです。

このあたりの詳しいことはキサゲの蘊蓄の追加情報をご覧ください。

私がやってるような粗雑な模型工作では、ハンダ付けで組み立てた真鍮の部品からはみ出たハンダを削りとったり、ホワイトメタルの部品の形をととのえたりするのがもっぱらの用途です。

上からデザインナイフ、精密ドライバーを研いだもの、かきとりキサゲ、キサゲ刷毛です。

要するにナイフや彫刻刀の一種だと思えばいいわけで、削る材料より固い刃物ならなんでも利用できますが、よく切れる刃物を使うに越したことはありません。

ドライバーなどをちょっと研ぐだけでも十分に用が足りますが、結局は切れ味をよく保つことが工作を楽にする秘訣です。

先を曲げて手前に引くタイプのかきとりキサゲも力が入って使いやすいものです。これは模型屋で手に入れたものですが、古いヤスリを焼き鈍して曲げ、グラインダーで加工して作ることもできます。

キサゲ刷毛というのは大阪のマッハ模型という鉄道模型専門店のオリジナルで、束ねたほそい鋼線の先で掃くようにして不規則な面の処理などに使います。線の太さがいろいろあるようです。

真鍮製の鉄道模型の場合、ハンダを削り取るには、鉄製のキサゲをつかうより真鍮板の先をとがらして削り取る方が、時間はかかりますが、地肌を痛めずに綺麗に処理できる場合もあります。

2001.11.1

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● 蘊蓄

いきなりですが、

やすり【鑢】棒状の鋼の面に小突起(目)を多数つけたもの。工作物の面を平らに削り、また角(かど)落しなどに用いる。平・角・目立・三角・笹葉・刀・丸・甲丸・両甲丸などがあり、目の形により単目・複目・三段目・わさび目に、目の大きさにより油目・細目・中目・大目・荒目・大荒目などに分れる。板状のものもある。〈和名抄一五〉。「―をかける」

うーむ、金工細工などでヤスリを使いなれている人であれば、これで、ほぼ必要十分な気がするけど、ヤスリを見たこともない普通のひとだったら、結局なんにもわからんという典型的な国語辞典的語釈です。平・角・目立・三角・笹葉・刀・丸・甲丸・両甲丸とか単目・複目・三段目・わさび目とか油目・細目・中目・大目・荒目・大荒目とか、それぞれどんな格好でどんな用途に使うのかちゃんときまってるんですが、めんどくさいから解説はしません。通常はこれらの様々な断面形状をしたものを5本から12本とりあわせて組ヤスリと呼んでいます。くわしく知りたい人は参考リンクをたどってみてください。

一般人には、板状のものもある、というのも謎だろうなあ。これもまたいろいろあるのだけれど、とりあえず板状に近いもので一般に馴染みのあるものというと、

かみ‐やすり【紙鑢】布や厚紙に金剛砂やガラスの粉を付着させ、物の表面を磨くのに用いるもの。磨研紙(まけんし)。やすりがみ。サンド‐ペーパー。

これですね。これならみんな知ってる。しかし、これ、金剛砂やガラスの粉ってのが気に入らないなあ。

粉の材料は、赤っぽい色をしたのが石榴石(ざくろいし)。黒いのがここで言う金剛砂です。

サンドペーパーにはあきれるほどいろいろな種類があって、それぞれ見かけや用途が違いますが、ま、我々が使うのは普通の石榴石の紙やすりと耐水ペーパー、布ヤスリと言ったところでしょう。こちらに簡単に種類とその特徴をまとめておきます

ヤスリに関係することわざ?もありました。

胸に鑢(やすり)を掛く=ひどく苦悩する。

こんなの知らなかったなあ。でも、気持ちが大変によくつたわってとても実感的な表現です、はい。

それはともかく、ヤスリのつく言葉で目に付くものを拾ってみたら、

がんぎ‐やすり【雁木鑢】太くて目のあらい鑢。

さめ‐やすり【鮫鑢】鮫皮を板にはりつけてつくり、物を研磨するのに用いるもの。

ま、このへんまでは、ふむふむ、というところですが、

はな‐やすり【花鑢】ハナヤスリ科の夏緑性シダ。原野に自生。短く直立した根茎から卵状長楕円形の一葉を出す。葉上から長柄を分出し、先端に胞子嚢をつける。胞子嚢は穂状に集まってその形は鑢(やすり)に似る。瓶爾小草。

なんでこんなのが混じってるんでしょうね? どっちにしても、この植物が知られるようになったのは、細長い鋼鉄のヤスリが一般的になってからだと言うことがわかっておもしろい名前です。レンズ豆もそうなのかなあ、あれから透明なレンズを連想するというのは結構たいへんなような気がしますが、と思って調べてみたら、意外な事実が分かってしまいました。詳しくはこちらを

植物で、ほかにヤスリに縁があるものは、と記憶の引き出しをあちこちひっくりかえしているうちに、「ままこのしりぬぐい」という名の植物を思い出しました。この植物、葉っぱの表面に生えている毛が、普通とは反対の方向に生えていています。しかもこれが剛毛。だから、葉っぱを付け根から先の方向になでると、その剛毛がざらざらちくちくと手のひらに引っかかってまるでおろし金のよう。これで尻を拭いたら本当にケガしそうです。だから「継子の尻拭い」なんて、ひどい名前をつけたものですが、なるほどなあ、とそのブラックユーモアに感心してしまわないでもありません。

それはともかく、植物とヤスリの関係をもっとまじめに考えていろいろ探してみたら、突き当たったのが、「木賊(トクサ)」。湿地などにはえるスギナのお化けみたいな植物で、節のあるストローみたいに中空になった茎(葉)の表面に細かい縦溝があり、珪酸を含んでいるので、昔はこれを乾かして、タンスなどの家具や木製品を磨いたり、漆塗りの研ぎ出しなどにも使っていたそうです。まさしくサンドペーパーの代わりですね。

例によって「広辞苑」を引いてみると、

とくさ【木賊】(「砥草(とくさ)」の意) トクサ科の常緑シダ植物。根茎は横走し、地上茎は根茎から分岐して直立し、高さ約五○センチメートル、円筒形で分枝しない。葉は小さく黒褐色で節に輪生し、集まって鞘(さや)を形成する。子嚢穂は土筆(つくし)に似、長楕円形で茎の先端に一個をつける。茎は珪酸を含み堅く、茎の充実している秋に刈り、物を砥ぎ磨くのに用いる。_季・秋_。〈和名抄一五〉[図]とくさ
―‐いた【木賊板】
―‐いろ【木賊色】
―‐ぶき【木賊葺き】

はい、いつものように植物図鑑でも見ているような記述ですね。一番最初にちゃんと、(「砥草(とくさ)」の意) とあります。が、おどろいたのは、そのすぐ後にもう一つ、同じ見出しが並んでいることでした。

とくさ【木賊】能の一。信濃で木賊を刈る老人が別れた愛児を慕い、その舞の手ぶりを思い出して舞う。
―‐かり【木賊苅】

こういうのは、普通なら一つの見出しで、(1)、(2)とやるところでしょうに、これは特筆すべきことです。いったいどうした理由があるのでしょう、といぶかりながらも、念のため、参照に示された【木賊苅】をひいてみると、

とくさ‐かり【木賊苅】歌舞伎舞踊の一。長唄。七変化の「姿花龝七種(すがたのはなあきのななくさ)」の一。初世杵屋正次郎作曲。能の「木賊」による舞踊。

うーむ、このこだわりは尋常ではありません。それならば、とこの能曲「木賊」について、あらためて襟をただし、真剣にあちこち探索してみたら、なんとまあ、日本の古典芸術論書「風姿花伝(ふうしかでん)」に行き着いてしまいました。「風姿花伝」と能曲「木賊」の関係は長くなるのでこちらでどうぞ

しかし気になるのは、とくさ【木賊】(「砥草(とくさ)」の意)の末尾に記されていた

―‐いた【木賊板】
―‐いろ【木賊色】
―‐ぶき【木賊葺き】

さすがに、めんどくさいなあと思いつつ、それでも気持ちを奮い立たせて引いてみたら

とくさ‐いた【木賊板】社寺の屋根を葺くのに用いる板。柿(こけら)より厚く、栩板(とちいた)より薄いもの。

なんじゃあ?この、柿(こけら)より厚く、栩板(とちいた)より薄いもの、って。これじゃ、実際はどんな厚さなのかさっぱりわからんじゃないか。しかたがないのでさらに「広辞苑」をひっくりかえし、

こけら【柿・木屑】(1)木材を削るときできる木の細片。また、木材を細長く削りとった板。〈和名抄一五〉(2)柿板(こけらいた)の略

とち‐いた【栩板】屋根を葺(ふ)くのに用いる板で、厚さ一〜三センチメートル、幅九〜一五センチメートル、長さ六三センチメートル以下のもの。古来、能舞台や堂社の屋根に用いる。

やっと、その具体的な厚さが判明しました。しかし、手間がかかること。だいたい、文学とか哲学の用語ならいざしらず、こういう物理的、具体的な物件に対して、修辞学的な語釈が横行しているというのがおかしいと思うのですが、ほんとにみんなこんな語釈で納得してるのかなあ。

もうひとつ、【木賊色】の方は、

とくさ‐いろ【木賊色】(1)染色の名。緑色に黒みを帯びたもの。(2)襲(かさね)の色目。表は萌葱(もえぎ)、または経(たて)黄、緯(ぬき)青の織色、裏は白。

木賊って、なんというか、能楽、謡曲だけじゃなく、日本古来の色の名称にまでなるほど、生活の中というか、日本の雅な文化の中に定着している植物だったのですね。いやはや勉強になりました。

というところで、もう一つのお題の「きさげ」のほうはどうなっているかというと、

きさげ 機械仕上げ・鑢(やすり)仕上げを行なった面を、さらに精密に仕上げるためにけずる手工具。平きさげ・ささばきさげなどがある。スクレイパー。[図]きさげ

ひら‐きさげ【平きさげ】きさげの一種。先端が直線状をなし、主として機械部品の平面滑動部分を仕上げるのに用いる。

これだけ。まあ、しかたありませんわな。これ以上、現物を見ないでどうやって説明したらいいのか、私にもよくわかりません。使い方まで事細かく書き記せば出来ないことはないのでしょうが、そこまでするかどうか。ただ、スクレイパーを「研究社新英和中辞典第6版」でひいてみると、

scrap・er
━《名》[C]
1 (戸口に置いて泥・雪などをこすり取るための)靴の泥落とし.
2 (ペンキを削り落とす)こて.
3 スクレーパー (なべなどについた食べ物をかき落とす硬いゴム製のへら).

となっていて、どこにもキサゲの話なんか出てきません。所詮特殊な専門分野の言葉なのでしょう。そういや、「カシメ」なんて言葉も、自分じゃふつうの言葉だと思っていたのだけど、一般の人には聞いたことも無いような専門用語だったというのに最近気づいて、びっくりした覚えがあります。

ちなみに「かしめ」の語釈は、

かしめ ボイラー・水槽・ガス溜などのリベット継ぎ手の部分からの漏出を防ぐために、板金の縁を、たがねの一種を当てて叩き、隙間をなくすること。コーキング。

念のためコーキングを英和辞書でひいてみると、

caulk・ing
━《名》[U] まいはだを詰めること; 水漏れの防止, コーキング.

caulk
━《動》(他)
1 〈船体の〉すき間にまいはだ (oakum) を詰める.
2 (まいはだを詰めてその上にピッチを流し込み)〈ものの〉水漏れを防ぐ; 〈…に〉コーキングする.
&ラテン語「踏みつける, 押し込む」の意

ふうん、そうなのか、でも「かしめ」には一見あんまり関係なさそうに見えるなあなどと思いつつ、この「まいはだ」ってなんじゃ?とoakumをひいてみると

oa・kum
━《名》[U] 【海】 まいはだ (古い麻綱をほぐしたもの; 甲板などのすきまに詰めて漏水を防ぐ).

この、まいはだ、「広辞苑」ではどうなっているかというと、

まいはだ【槙皮・槙肌】(マキハダの音便)ヒノキやマキの内皮を砕き、柔らかい繊維としたもの。舟、桶などの水の漏るのを防ぐため、合わせ目または継ぎ目に詰め込む。のみ。のめ。

なんじゃ、この最後にある、のみ。のめ。というのは? とあたってみると、

のみ【[糸偏+如]・[衣偏+如]・(船[竹冠+如])・(衣[衣偏+如])】槙皮(まいはだ)のこと。のめ。太平記三三「矢口の渡りの船の底を二所えり貫(ぬ)いて―を差し」。「―打ち」

のめ【[糸偏+如]・[衣偏+如]・(船[竹冠+如])・(衣[衣偏+如])】→のみ
注:漢字がないので、[偏+旁(つくり)]、[冠+脚]で表しておきました。

やっぱり、とどめは古典文学からの引用でした。このためだけに、わざわざこの見出しが設けられているようなものですね。

いやはや、「広辞苑」で、こんなに楽しめるとは、ほんと、思いもよりませんでした。

2001.11.1 追記

キサゲについては、勉強が足りませんでした。「きさげ」のすぐそばに

きさ・ぐ【刮ぐ】[他下二] 削りおとす。こそぐ。記上「かれ[討冠+虫]貝比売(きさがいひめ)―・げ集めて」

注:漢字がないので、[冠+脚]で表しておきました。

とありました。

念のため、他の辞書も当たってみると、

きさげ【刮・削】(動詞「きさぐ(刮)」の名詞化)1 金属や石をみがく工具。2 象牙を加工、細工する人。3 機械仕上げや、やすり仕上げを施した金属面をさらに平滑に仕上げたり、機械部品の縁のまくれを取り除いたりするための刃物。スクレーパー。

『きさぐ【刮ぐ・削ぐ】〔他ガ下二〕(「きさ」は「きざむ(刻)」の「きざ」と同根か)削りおとす。かきけずる。こそぐ。*古事記‐上「爾に俎貝比売、岐佐宜(キサゲ)集めて』

小学館 国語大辞典(新装版 1988)

なんと、小学館 国語大辞典のほうがうんと詳しいです。しかし、古事記からの引用の文字が違うのはどうしてなんでしょう?

どちらにしても、「きさぐ」は「刮ぐ」と書くことがわかりました。いままでこういう文字があることさえ知りませんでした。反省です。

以上のほか、「まいはだ」関係にも追記がありますので、ご興味のある方はどうぞ。


● 参考リンク

ヤスリ規格表
岡野機器のページ。様々なヤスリの規格が詳しく掲載されています。

ヤスリの種類、用途、使い方
ハンズマンのページ。要領よく基礎知識がまとめられています。

ヤスリ製造マニュアル
中小製造業のものづくりを支援する技術情報サイト「テクノナレッジネットワーク」のページ。

福島ヤスリ商店

平面を支配する腕
「中央職業能力開発協会/達人の技」のページ。キサゲ処理作業の内容がわかりやすく丁寧に解説されています。

といしがたいらにならない
「高橋明ヴァイオリン工房」砥石奮戦記の一節です。砥石を平らにするまでの試行錯誤の過程が詳しく紹介されてます。

キサゲを学ぶ

東京都立北豊島工業高等学校 窪田和人先生のキサゲ彫刻の紹介(明星大学 情報学部 経営情報学科 小島研究室のページ)

児童文学の部屋
翻訳児童文学を扱っているページです。以下も同じ方のページ。リンクも充実しています。
黒鳥亭(アーサーランサムについて)
赤龍館(トールキンに関連すること)


● 余談

単目と復目

単目というのは、一方向にだけ筋がついて縞模様のように見えるもので、仕上げ面が綺麗です。復目というのは、削り屑を掃き出して削る効率を上げるため単目に重ねて交差するように目を刻んであるもので、普通はこっちの方がよく見かけられます。

小突起(目)を多数つけたもの

この目、どうやってつけるのだろうと常々思っていたのですが、この間、国立科学博物館でやってたイタリアルネサンスの技術展で、歯車とねじ送り機構を使った機械例として、鑢の目立て機の展示をみて、なるほどと納得しました。台の上に置いた材料がねじで少しずつ送られるのにあわせてカム機構で一定の感覚で目を刻むたがねがうち下ろされるようになっているというわけです。だから、コバにカエリが出るんですね。しかし、この方法では目を立てるに従って材料が曲がってくるだろうし、あとで精度を出すのがたいへんだろうなあ。

味噌とヤスリの関係

まわり道のようですが、まずはヤスリの作り方を説明しなければなりません。ヤスリも刃物ですから、基本的な工程はほかの刃物と同じですが、ヤスリゆえの構造的な特徴から、いくつか独特な処理や工夫が見られます。以下がその工程です。

やすりの作り方

1.所定寸法に材料を裁断。
2.火造り(900〜1,200度)により整形。
3.表面研磨。
5.タガネを打ち込んで、切り刃を目立て。
6.やすりに味噌を塗って乾燥。
7.焼入れ。800度に加温した鉛で加熱後水冷。
8.切れ味検査を経て完成。

いきなり6番目に「ヤスリに味噌を塗る」と出てきました。これがヤスリと味噌との切っても切れない関係です。ヤスリの焼き入れには絶対に味噌が必要なのです。

和包丁などの焼き入れなどでは泥を塗る場合もあるようですが、通常の刃物の焼き入れは、特にそのような処理をすることなく、直接760℃〜800℃に加熱し、そのあともろさを取るために焼き戻しを行うと言う工程を経ます。ヤスリの場合、焼き入れ後の研ぎが出来ないので刃の形状を保ち均一に加熱するために鉛を使用することや、ヤスリの構造(形状)自体が味噌を塗る工程を必要としているのです。

味噌はヤスリの目の凹部をつぶすように塗ります。その効果を整理すると、

1.鉛で加熱するとき、複雑に突起した目に鉛が付着しない。

2.焼入れ時にV字型の目の凹部からの割れを防止する。

3.塗りつけた味噌が、過熱したヤスリを水に入れた瞬間に、表面おおう水蒸気膜を破壊するとともに、含まれている食塩が焼入れ水に溶けることによって冷却能がよくなり、均 一で完全な焼入れによる最高焼入れ硬さが得られる。

ということです。江戸時代の刀鍛冶・水心子正秀の「剣工秘伝志」にも「焔硝味噌を塗って焼入れしていた」と記されているそうです。

使われている味噌は、食用の味噌と同じもので、全国のやすりの95%(年間1,600万本)を生産する広島県駅仁方町で消費される味噌は年間4〜5トンにもなるそうです。また、仁方町のヤスリメーカーは、壺○○、壺××と壺のつく商標が多いのですが、これは味噌を保存する壺、もしくは師匠すじの大阪の壺井豊次郎から来ているのだということです。

味噌のない、外国ではどうするんだろうと思ったら、加熱したやすりに馬糞を塗ったり、牛の角の粉末と塩をふりかけたりしているそうで、加熱する前に味噌を塗る日本のやりかたとは随分と工程が違うようです。

ニコルソン

押しも押されぬヤスリのトップブランドで、アメリカのメーカーです。20センチ以上の平ヤスリなど標準タイプの鉄工ヤスリが中心です。「技能オリンピッククラスの切れ味と精度を期待するならニコルソンです」なんて宣伝文を見たこともあります。このタイプのヤスリメーカーとしてはオバーグというブランドも出回っていて、私はこれと日本のメーカーのものを使用しています。オバーグはスウェーデンの会社なのですが、どういうわけか生産はポルトガルで行っているようです。

精密作業用の組ヤスリは、スイスのバローベが最高だといわれています。糸鋸の刃のメーカーとしても有名ですね。この間、バローベのセカンドクラス5本組というのを格安で手に入れました。注意書きに「社内の検査に合格しなかったものですが、通常の使用には問題ないと存じます」とかかれており、実際に一部わずかに形状や目の乱れが見られました。しかし、現在使っているホームセンターで手に入れた12本組1000円のヤスリも、コバの処理をしたら、十分実用になっているので、どれだけバローベの御利益があるのか、使ってみないと何ともいえません。

石榴石(ざくろいし)

ざくろ‐いし【石榴石】マグネシウム・鉄・マンガン・カルシウム・アルミニウムなどを含む珪酸塩鉱物の一群。変成岩に多い。等軸晶系で、黄・褐・赤・黒色。主に研磨材。硬度七。半透明で深紅色の美しいものは飾石・宝石にする。ガーネット。

ガーネットですよ、ガーネット。宝石なんですねえ。ダイヤモンドもそうだけど、宝石って機械や研磨材に使われる用途の方がうんと多いそうです。もっともそういうのは宝石になるような見栄えなど関係ないから、お値段も随分と違うそうですが。

ところで、このザクロ、鬼子母神の食べ物と言うことで有名ですが、最近は健康にいいとかで特に女性は好んでジュースなど摂取するとかしないとか、現代女性の鬼子母神化なんて、あんまりジョークになんないですねえ。

そのザクロのジュースですが、昔はその酸を銅鏡の面を磨くのにつかっていたということで、石榴口という言葉ができたということです。なかなかいきなシャレがあったものです。

ざくろ‐ぐち【石榴口】
(1)江戸時代の銭湯の湯ぶねの入口。湯のさめるのを防ぐために、湯ぶねの前部を板戸で深くおおったもの。からだを屈(かが)めて中に入る。ザクロの実の酢は鏡の金属面をみがく料となるから、「屈み入る」と「鏡要る」とをかけた名という。浮世風呂三「はい、まづおさきへと、―へはいる」
(2)裂け開いた口。はぜぐち。[図]石榴口

浮世風呂というのは式亭三馬の著作ですね。徹底した庶民の糞リアリズムがとてもおもしろい。このひとの作品のうちでは、なんてったけなあ、早わかり胸のからくりとかなんとかいうのも結構いけます。

金剛砂

こんごう‐しゃ【金剛砂】‥ガウ‥(1)種々の不純物を混じた細粒状の鋼玉。粉末にして研磨剤とする。金剛鑽。金剛錠。エメリー。(2)土俵入の時、力士が両手にもみこむ砂。

というわけで、ここでは(1)のほうのことですが、エメリーというのは英語で金剛砂のこと。だから、エメリーペーパーというのは金剛砂をつかったものをいうかと思いきや、一般には裏が和紙でできている柔らかなタイプの特殊なサンドペーパーのことを指していたりします。

ちなみに、砂じゃなくて石になるとどうなるかというと、

こんごう‐せき【金剛石】‥ガウ‥最も堅い石。ダイヤモンドの別称。盛衰記三九「石は補陀洛山にしては宝石と名づく。或いは―と云ひ」

盛衰記というのは源平盛衰記のことです。この時代はダイヤモンドをこう呼んでいたのですね。金剛というのは実は、仏教において非常に象徴的な特殊な言葉で、これと結びついているということが、たいへん興味深く感じられます。

で、あらためて「金剛」をひいてみると、

こん‐ごう【金剛】‥ガウ(梵語 vajra  跋折羅・縛日羅ばざら)(1)金属のなかで最も硬いもの。ダイヤモンド。転じて、極めて堅固でどんなものにもこわされないこと。栄華玉台「―の身なれば」(2)金剛杵(しよ)の略。今昔一四「手に―を取り」(3)金剛界の略。(4)金剛身(しん)の略。(5)金剛草履の略。義経記二「腹巻着て―履いて」
―‐いんこ【金剛鸚哥】‥ガウ‥
―‐かい【金剛界】‥ガウ‥
―‐かい‐ほう【金剛界法】‥ガウ‥ホフ
―‐かい‐まんだら【金剛界曼荼羅】‥ガウ‥
―‐がき【金剛垣】‥ガウ‥
―‐きょう【金剛経】‥ガウキヤウ
―‐けつ【金剛_】‥ガウ‥
―‐けんご【金剛堅固】‥ガウ‥
―‐こうたく【金剛光沢】‥ガウクワウ‥
―‐ざ【金剛座】‥ガウ‥
―‐ざおう【金剛蔵王】‥ガウ‥ワウ
―‐さく【金剛柵】‥ガウ‥
―‐さく【金剛索】‥ガウ‥
―‐さくせいき【金剛鑿井機】‥ガウ‥
―‐ざくら【金剛桜】‥ガウ‥
―‐し【金剛子】‥ガウ‥
―‐しゃ【金剛砂】‥ガウ‥
―‐しゅ【金剛手】‥ガウ‥
―‐しょ【金剛杵】‥ガウ‥
―‐じょう【金剛乗】‥ガウ‥
―‐しん【金剛心】‥ガウ‥
―‐しん【金剛身】‥ガウ‥
―‐じん【金剛神】‥ガウ‥
―‐せき【金剛石】‥ガウ‥
―‐ぞうおう【金剛蔵王】‥ガウザウワウ
―‐ぞうり【金剛草履】‥ガウザウ‥
―‐ち【金剛智】‥ガウ‥
―‐ちょう‐ぎょう【金剛頂経】‥ガウチヤウギヤウ
―‐づえ【金剛杖】‥ガウヅ
―‐どうじ【金剛童子】‥ガウ‥
―‐どうじ‐ほう【金剛童子法】‥ガウ‥ホフ
―‐ばん【金剛盤】‥ガウ‥
―‐はんにゃ‐きょう【金剛般若経】‥ガウ‥キヤウ
―‐ふえ【金剛不壊】‥ガウ‥
―‐ぶっし【金剛仏子】‥ガウ‥
―‐やしゃ【金剛夜叉・金剛薬叉】‥ガウ‥
―‐やしゃ‐ほう【金剛夜叉法】‥ガウ‥ホフ
―‐りき【金剛力】‥ガウ‥
―‐りきし【金剛力士】‥ガウ‥
―‐れい【金剛鈴】‥ガウ‥

ね、例示された熟語の数が半端じゃありませんでしょ。しかもそのほとんどが仏教用語。ご興味のある方はどうぞご自分でお調べの程を。

例によって、もう一つ独立に見出しが設けられておりました。

こんごう【金剛】‥ガウ (1)能の家の一。(2)金剛流の略。(3)金剛座の略。
―‐ざ【金剛座】‥ガウ‥
―‐りゅう【金剛流】‥ガウリウ

ここでも、やっぱり能楽関係は別扱いでした。「広辞苑」のこだわりは徹底しています。

しかし、圧倒的な例示熟語にも漏れている言葉があるのに思い当たりました。郷里で毎日のように眺め、遠足やハイキングなどで幾度と無く登ったていた象徴的な山、金剛山。大阪周辺に育った人間でこの山に登ったことのない人などいないはずです。楠正成で有名な千早城址もありますしね。これをないがしろにするわけにはまいりません。ということで、ひいてみると

こんごう‐さん【金剛山】‥ガウ‥(1)大阪府と奈良県にまたがる金剛山地の最高峰。海抜一一二五メートル。西麓に千早城址がある。高間山。(2)朝鮮半島の東部、太白山脈の北部の山。海抜一六三八メートル。全山が黒雲母と花崗岩から成り、一万三千峰と称され、長安寺・神渓寺などの伽藍と相まって景勝の雄をなす。クムカン山。

へえー、しらんかったなあ。朝鮮にも同じ名前の山があったなんて。古代大和王朝時代には朝鮮から帰化した人々が技術文化の中心を担っていたということですが、そういうことと、なにか関係があるのでしょうか?

ほかにも、「金剛寺」と言うのを思い出したのでひいてみました。

こんごう‐じ【金剛寺】‥ガウ‥大阪府河内長野市天野町にある真言宗の寺。行基(ぎようき)の開基と伝え、南朝の帰依をうけた。天野行宮(あんぐう)。女院高野ともいわれる。

なんと、行基菩薩がつくったお寺だったとは知りませんでした。

ぎょうき【行基】ギヤウ‥奈良時代の僧。和泉の人。道昭に師事。畿内を中心に諸国を巡り、民衆教化や造寺、池堤設置・橋梁架設等の社会事業を行い、行基菩薩と称された。初め僧尼令違反で禁圧されたが、大仏造営の勧進に起用され、大僧正位を授けられた。(668〜749)

郷里の周辺には行基にまつわる史跡がありまして、光明池や家原寺が有名です。家原寺はなんと、行基の生家だったのですね。このお寺には、池があるのですが、その池に住む魚はすべて片目であるということで、これは、柳田国男の「妖怪談義」にも出てくる話なので、けっこう知られている伝説?なのかもしれません。

子供の頃は1月15日に行われる「家原のとんど」に毎年のように行ってました。本尊の文珠菩薩が日本三大文珠のひとつで「知恵の文珠さん」なので、入学などの祈願文を落書すると、受験に成功すると信じられていて、私も例に漏れず、鉛筆や白墨なんかで伽藍にやたらめったら落書きしたのを覚えてます。現在は落書きの代わりに、願い事をハンカチに書いて貼ることになっているそうですが。

こちらに簡単に種類とその特徴をまとめておきます

洋紙ペーパー 最も一般的な紙ヤスリ
空研きペーパー 木工研磨に最適。目詰まりしにくい。
布ぺーパー 鉄サビ落としなど金属用。裏地が布製のため丈夫。
耐水ペーパー(水ペーパー) 水にぬらして使う。目詰まりすることなく研磨できる。
ポリネットシート メッシュのため目詰まりしにくく、裏表両面使用できる。
ラッピングフィルム 粒子が非常に細かく均一なので精密研磨向き。
エメリーペーパー 裏地が和紙。柔らかくツヤ出しに効果が大。プラスチックやアクリル研磨向き。

気持ちが大変によくつたわってとても実感的な表現です

なんで?というのは、詳しく聞かないでくださいね。でも、毛布ってこんなにやわらかで暖かだったのかと感じた、あのときの感触と気持ちはわすれられません。意味深だなあ・・・

「風姿花伝」と能曲「木賊」の関係

ご存じこれは、世阿弥元清が、父観阿弥の芸風・遺訓を基にして著した能楽論書で、能の命である「花」の考察を中心に、稽古、演出、演技、芸位などに関する工夫や心得を記した芸論の集大成です。

で、件の「木賊」は、ご推察のとおり、世阿弥の作。みなし子を連れた都の僧が木曾の山奥で木賊刈りの老人にあい、問わず語りに老人が、昔行方しれずとなった子は舞が好きであったといいながら、物狂わしく舞いはじめ、それを見たみなし子が父親と知り、ついに名乗りあうと言う筋で、ただ、それだけなら、別になんてことないのですが、この能曲「木賊」にはおもしろいエピソードがあります。

江戸時代初期にある能役者がこの老人の木賊を刈るまねが得意で、なんというか「天下の妙」を誇っていたのですが、あるとき観客の一人が片隅で笑っているのに気づき、問いただしてみるとこれが本職の木賊刈り。すまなそうに「太夫さんの手つきじゃ木賊は刈れぬ」といわれて感じ入り、その木賊刈りに弟子入りして芸を極め、その名をいよいよ高めた、と言う話なのですが、どうもこれはせっかくのおもしろい話を「稔るほど頭をたれぬ稲穂かな」の伝で、陳腐な教訓話に仕立て上げてしまったために、せっかくの世阿弥の能芸論がぶちこわしになっているのが、残念なところです。

世阿弥は「物まねを極めてそのものにまことに成り入りぬれば似せんと思ふ心なし」とはいっているけど、さらに加えて「遊女美男などの物まねをよく似せたらば、おのづから幽玄なるべし」。しかし「田夫野人、乞食非人」のたぐい、つまり木賊刈りなどの役割は美しく見せるような一工夫をしなければ芸にはならない。つまり、そのしぐさにある意味での「花」が必要だ。ということを述べているのです。

"しかれば、道を嗜み芸を重んずるところ、私なくば、などかその徳を得ざらん。ことさら、この芸その風を続ぐといへども、自力より出づるふるまひあれば、語にもおよびがたし。その風を得て、心より心に伝はる花なれば、風姿花伝と名附く。"(「第五 奥儀に云ふ」より)

というわけ。

余談ですがこの「風姿花伝」、今は、私の様な不埒者でも、岩波文庫で自由に読むことが出来ますが、本来は、観世家、今春家などに秘蔵されていたもので、1909年に吉田東伍校駐『能楽古典世阿弥十六部集』が刊行されるまで、一般には公開されていなかったんだそうです。こういう話を聞くと、本当に良い時代に生まれたものだと、いまさらながらに感激してしまいます。

「初心忘するべからず」というのも世阿弥の言葉なのだそうです。この言葉、世阿弥にさかのぼるとは、今まで知りませんでした。感動を新たに致しました。

レンズ豆

意外なことに、レンズ豆の方がレンズの語源だったということがわかってしまいました。

レンズ豆は、西アジアから地中海沿岸地域が原産地で、主産地。聖書の記述にも出てくるというから、その栽培植物としての歴史は相当な物です。緑色、緑褐色、あるいは黒色の斑紋のある淡赤色などの種類がありますが、日本では、なじみが薄く、デパートや輸入食料品を扱っている店に売っているくらい。プロテインが多く含まれ、栄養価も高くて、ヨーロッパではごく普通の料理に使われるそうです。レンズという言葉は、もともとはラテン語で、この豆のことを指していたんだそうです。

で、ここからが本題。

この「レンズ豆」は、和名を「ヒラマメ」といって、その名のとおり平たく押しつぶされたような形をしています。このため、昔のイタリアの人々は、レンズ豆のかたちをしたガラスを「ガラスのレンズ」と呼び、それがいつの間にか、「レンズ」という言葉だけになって、世界中で使われるようになったというわけです。

いやはや、勉強になりました。

しかし、そういや、ほかにもひよこ豆なんてのがありました。こっちはまさかそういうことはないだろうなと、ネットを探してみたら、こういうページがありましたので、ご紹介しておきます。

ひよこ豆.com / hiyokomame.com

もちろん、ひよこ豆のことも、レンズ豆のことも、そのほかの豆のことも紹介されています。参考になります。

おろし金

大根やショウガ、わさびなどをすりおろす器具で、穴の開いた金属板に小さな棘がならんでいるタイプが一般的ですが最近はプラスチック製のものも多いですね。昔、大根用には刻み目を入れた竹の板を並べたような構造のものもあったようです。

わさびをすりおろすには鮫の皮を張った板を使うのが正式だと通の方はおっしゃいますが、なに、味が変わるわけじゃあありません、とNHKの料理番組で有名な日本料理のコック?さんが言ってました。要はとげの細かさということらしいですね。

鮫の皮のとげとげは、あれは実は歯が変形したものだそうで、顕微鏡で見ると鮫の口の中にある歯と同じ格好、構造をしているのだそうです。これを板に張り付けたものは一種の板ヤスリと言うこともできますね。

カタツムリやナメクジの口はヤスリのようになっていて、これで植物の表面を削り取って摂取しているのだそうです。体は柔らかそうに見えるんですが、固い器官をもっているのですね。

ネコの舌もざらざらしていて、これでもわさびが下ろせるんじゃなかろうかなんて考えたりもしますが、そういえば、宮沢賢治の「セロ弾きのゴーシュ」のなかに、やってきたネコの舌でマッチをつける場面がありました。あれもきっとネコの舌をヤスリに見立ててのことなのでしょう。

手仕上げで精密な平面を出すために使われるものです

図書館で見つけた「技能ブックスシリーズ7手仕上げのベテラン(大河出版社)」を見て、キサゲ処理の本当の意味を理解。

キサゲというのは、機械加工では出すことが出来ない精密な平面を作るなど細かな調整のために使われるものだったのですね。

ここで使われるキサゲというのは、平ノミのような平キサゲと、反った槍の穂先のようなささばキサゲです。ささばキサゲは、ちょうど木工でいう槍がんなにあたりますが、主に曲面を仕上げるのに使われます。

平キサゲのほうは、柄の後端に腰当がついています。材料に刃をあてがい、腰を使って押すようにしながら面を削っていくのです。

キサゲた面には当然のことながら刃の痕が残ります。このとき、刃を進める方向や力の入れ方によって、おのずから、元禄(市松)三角、三日月、千鳥などと呼び慣わされる模様が浮かび上がります。

もちろん、模様そのものによる精度の差はありませんが、これはなかなか美しいもので、ただ外観のためだけに模様をつけることさえもあるほどです。この装飾のためのキサゲ処理は工芸の分野で活用されています。

また、機械のすべり面などに油たまりを作るためにもこのような模様を意図的につけることもあるようです。

キサゲ処理作業については、こちらのページに丁寧に詳しく解説されています。

精密な平面

平面といえば、左甚五郎があるとき2枚の板に鉋をかけてその面を合わせると、力自慢の侍もひきはがすことが出来なかったという逸話があります。すばらしく精密な平面になるように鉋掛けする左甚五郎の腕をたたえるお話です。

このエピソード、かなり眉唾物ですが、たしかに塗れたガラス板など、2枚合わせると引き剥がすのが困難になるのは、私も経験がありますので、あながち嘘ともいえません。

が、よくかんがえてみれば、このはなし、片方が凸面で片方が凹面であったとしても、隙間なくぴったりくっつきさえすれば、成り立ってしまいます。つまりあわさる面が正確な平面でなくっても良いのです。

では、定盤のように基準となる平面がない場合に、正確な平面を作るにはどうしたらよいのか?

2枚の板をすりあわせるだけでは、力の加減によってかならず、片方が凸面で片方が凹面になります。これは、反射型天体望遠鏡のレンズを自作するとき、2枚の円形のガラス板に金剛砂を塗って気長にすりあわせて作ることでもわかります。蛇足ですがこのレンズ作り、ほんと根気がいるんですよね。

正確な平面を作るには、3枚の板を交互にすりあわせる「3枚合わせ」という方法をつかうのです。

3枚あわせの工程については、砥石の例ですが、こちらのページに平面を作るまでの試行錯誤の過程を含めた丁寧な解説がありますのでご紹介します。

3枚あわせ

3枚あわせの原理により、一応平面と見られるA,B,C三枚の板を5工程で完全な平面にする事が出来ます。

工程1:まずA,Bをすりあわせて双方の当たりを取ります(ともずり)。
    この結果、片方が凸面、もう片方が凹面となります。
    ここではAを凸面、Bを凹面と考えて話を進めることにします。

工程2:Aを基準にしてCをすりあわせます(Cを削る)。
    この結果、Cは凹面となります。

工程3:ともに凹面となったB、Cをともずりします。
    この結果、双方の当たりが削られるのでB、Cともに平面となります。

工程4:Bを基準にして凸面であったAをすりあわせます(Aを削る)。
    この結果、Aは平面となります。

工程5:ともに平面となったC,Aをすりあわせてみます。
    この結果、当たりなくあわされれば、A,B,C三枚の板はともに正確な平面になったというわけです。

当たりがある場合は、上記工程を繰り返します。

この「まいはだ」ってなんじゃ?

と、書きましたが、ほんとうはこの言葉には特別の思い入れがあるのです。というもの、少年のころ(があったんかい!というツッコミはなしですよ)に読んだ児童文学、アーサーランサムの「ツバメ号とアマゾン号」シリーズ12巻、それから、ジョンメンスフィールドの「ニワトリ号一番乗り」どちらにも、この「まいはだ」とピッチをつかってボートの水漏れを防ぐシーンが出てきて、そこではじめてこの言葉をおぼえたものだからです。林業関係の勉強をするようになって、まいはだがヒノキなどの木の皮を叩きつぶしてつくられるものであることを思い出したときには、いよいよ、この言葉に親しみが湧いたものでした。「ツバメ号とアマゾン号」には、雨の中のキャンプでまいはだをほぐしてたき火のほくちにつかう場面もあったなあ。

児童文学

私はいわゆるジュビナイルのファンです。ただし、日本でいう児童文学の範疇を越えたもの、たとえばトールキンの「ホビットの冒険」のようなファンタジー、アンドレノートンの「太陽の女王号シリーズ」などのSFも含んでのことです。もちろん、いまでこそジュビナイルとして扱われることも多いけれど、決してジュビナイルとして書かれたものではなかった、「宝島」や「二年間の休暇(15少年漂流記)」などもその仲間です。

日本では、この児童文学という名称だけで、軽く見られる風潮があるのが残念でなりません。もっとも、特に日本では、そういうエエカゲンなしろものも多いから話がややこしくなるのですが。

とにもかくにも、あちこちでいわれているように、児童文学は一般の文学と何の違いもありません。あえて特徴としてあげられるのは、露骨な性描写がないというだけの話ではないかと思うわけです。あ、最近はそういう区別もなくなってきたかな?

どっちにしても、ジュビナイルには、小説の楽しみの原点のようなものが溢れていると思います。ここで例に挙げた本だけでも、図書館で手にとって欲しいものだと思います。

児童文学関係では、参考になるページも多いのですが、私の少年時代の最大の愛読書だったアーサーランサムとトールキンに詳しいところを一つ、リンクにあげておきました。

ところで、日本の児童文学というと、やたら戦争悲劇関係の話が多くてそれがもてはやされるのが、うっとおしい。小学校の娘の教科書なんてそういう話ばっかりだもんなあ。ああいうのは、あまりにも「おもしろく」なさすぎます。くらくなるだけ。小説を読む楽しみを子供から奪ってしまうようなものだと信じてますので、娘が実にくだらん赤川次郎風の少女向け文庫を読んでいても、それが本を好きになるきっかけになればと、口出ししないことにしてます。