● 余談
! 単目と復目
単目というのは、一方向にだけ筋がついて縞模様のように見えるもので、仕上げ面が綺麗です。復目というのは、削り屑を掃き出して削る効率を上げるため単目に重ねて交差するように目を刻んであるもので、普通はこっちの方がよく見かけられます。
! 小突起(目)を多数つけたもの
この目、どうやってつけるのだろうと常々思っていたのですが、この間、国立科学博物館でやってたイタリアルネサンスの技術展で、歯車とねじ送り機構を使った機械例として、鑢の目立て機の展示をみて、なるほどと納得しました。台の上に置いた材料がねじで少しずつ送られるのにあわせてカム機構で一定の感覚で目を刻むたがねがうち下ろされるようになっているというわけです。だから、コバにカエリが出るんですね。しかし、この方法では目を立てるに従って材料が曲がってくるだろうし、あとで精度を出すのがたいへんだろうなあ。
! 味噌とヤスリの関係
まわり道のようですが、まずはヤスリの作り方を説明しなければなりません。ヤスリも刃物ですから、基本的な工程はほかの刃物と同じですが、ヤスリゆえの構造的な特徴から、いくつか独特な処理や工夫が見られます。以下がその工程です。
やすりの作り方
1.所定寸法に材料を裁断。
2.火造り(900〜1,200度)により整形。
3.表面研磨。
5.タガネを打ち込んで、切り刃を目立て。
6.やすりに味噌を塗って乾燥。
7.焼入れ。800度に加温した鉛で加熱後水冷。
8.切れ味検査を経て完成。
いきなり6番目に「ヤスリに味噌を塗る」と出てきました。これがヤスリと味噌との切っても切れない関係です。ヤスリの焼き入れには絶対に味噌が必要なのです。
和包丁などの焼き入れなどでは泥を塗る場合もあるようですが、通常の刃物の焼き入れは、特にそのような処理をすることなく、直接760℃〜800℃に加熱し、そのあともろさを取るために焼き戻しを行うと言う工程を経ます。ヤスリの場合、焼き入れ後の研ぎが出来ないので刃の形状を保ち均一に加熱するために鉛を使用することや、ヤスリの構造(形状)自体が味噌を塗る工程を必要としているのです。
味噌はヤスリの目の凹部をつぶすように塗ります。その効果を整理すると、
1.鉛で加熱するとき、複雑に突起した目に鉛が付着しない。
2.焼入れ時にV字型の目の凹部からの割れを防止する。
3.塗りつけた味噌が、過熱したヤスリを水に入れた瞬間に、表面おおう水蒸気膜を破壊するとともに、含まれている食塩が焼入れ水に溶けることによって冷却能がよくなり、均
一で完全な焼入れによる最高焼入れ硬さが得られる。
ということです。江戸時代の刀鍛冶・水心子正秀の「剣工秘伝志」にも「焔硝味噌を塗って焼入れしていた」と記されているそうです。
使われている味噌は、食用の味噌と同じもので、全国のやすりの95%(年間1,600万本)を生産する広島県駅仁方町で消費される味噌は年間4〜5トンにもなるそうです。また、仁方町のヤスリメーカーは、壺○○、壺××と壺のつく商標が多いのですが、これは味噌を保存する壺、もしくは師匠すじの大阪の壺井豊次郎から来ているのだということです。
味噌のない、外国ではどうするんだろうと思ったら、加熱したやすりに馬糞を塗ったり、牛の角の粉末と塩をふりかけたりしているそうで、加熱する前に味噌を塗る日本のやりかたとは随分と工程が違うようです。
! ニコルソン
押しも押されぬヤスリのトップブランドで、アメリカのメーカーです。20センチ以上の平ヤスリなど標準タイプの鉄工ヤスリが中心です。「技能オリンピッククラスの切れ味と精度を期待するならニコルソンです」なんて宣伝文を見たこともあります。このタイプのヤスリメーカーとしてはオバーグというブランドも出回っていて、私はこれと日本のメーカーのものを使用しています。オバーグはスウェーデンの会社なのですが、どういうわけか生産はポルトガルで行っているようです。
精密作業用の組ヤスリは、スイスのバローベが最高だといわれています。糸鋸の刃のメーカーとしても有名ですね。この間、バローベのセカンドクラス5本組というのを格安で手に入れました。注意書きに「社内の検査に合格しなかったものですが、通常の使用には問題ないと存じます」とかかれており、実際に一部わずかに形状や目の乱れが見られました。しかし、現在使っているホームセンターで手に入れた12本組1000円のヤスリも、コバの処理をしたら、十分実用になっているので、どれだけバローベの御利益があるのか、使ってみないと何ともいえません。
! 石榴石(ざくろいし)
ざくろ‐いし【石榴石】マグネシウム・鉄・マンガン・カルシウム・アルミニウムなどを含む珪酸塩鉱物の一群。変成岩に多い。等軸晶系で、黄・褐・赤・黒色。主に研磨材。硬度七。半透明で深紅色の美しいものは飾石・宝石にする。ガーネット。
ガーネットですよ、ガーネット。宝石なんですねえ。ダイヤモンドもそうだけど、宝石って機械や研磨材に使われる用途の方がうんと多いそうです。もっともそういうのは宝石になるような見栄えなど関係ないから、お値段も随分と違うそうですが。
ところで、このザクロ、鬼子母神の食べ物と言うことで有名ですが、最近は健康にいいとかで特に女性は好んでジュースなど摂取するとかしないとか、現代女性の鬼子母神化なんて、あんまりジョークになんないですねえ。
そのザクロのジュースですが、昔はその酸を銅鏡の面を磨くのにつかっていたということで、石榴口という言葉ができたということです。なかなかいきなシャレがあったものです。
ざくろ‐ぐち【石榴口】
(1)江戸時代の銭湯の湯ぶねの入口。湯のさめるのを防ぐために、湯ぶねの前部を板戸で深くおおったもの。からだを屈(かが)めて中に入る。ザクロの実の酢は鏡の金属面をみがく料となるから、「屈み入る」と「鏡要る」とをかけた名という。浮世風呂三「はい、まづおさきへと、―へはいる」
(2)裂け開いた口。はぜぐち。[図]石榴口
浮世風呂というのは式亭三馬の著作ですね。徹底した庶民の糞リアリズムがとてもおもしろい。このひとの作品のうちでは、なんてったけなあ、早わかり胸のからくりとかなんとかいうのも結構いけます。
! 金剛砂
こんごう‐しゃ【金剛砂】‥ガウ‥(1)種々の不純物を混じた細粒状の鋼玉。粉末にして研磨剤とする。金剛鑽。金剛錠。エメリー。(2)土俵入の時、力士が両手にもみこむ砂。
というわけで、ここでは(1)のほうのことですが、エメリーというのは英語で金剛砂のこと。だから、エメリーペーパーというのは金剛砂をつかったものをいうかと思いきや、一般には裏が和紙でできている柔らかなタイプの特殊なサンドペーパーのことを指していたりします。
ちなみに、砂じゃなくて石になるとどうなるかというと、
こんごう‐せき【金剛石】‥ガウ‥最も堅い石。ダイヤモンドの別称。盛衰記三九「石は補陀洛山にしては宝石と名づく。或いは―と云ひ」
盛衰記というのは源平盛衰記のことです。この時代はダイヤモンドをこう呼んでいたのですね。金剛というのは実は、仏教において非常に象徴的な特殊な言葉で、これと結びついているということが、たいへん興味深く感じられます。
で、あらためて「金剛」をひいてみると、
こん‐ごう【金剛】‥ガウ(梵語 vajra 跋折羅・縛日羅ばざら)(1)金属のなかで最も硬いもの。ダイヤモンド。転じて、極めて堅固でどんなものにもこわされないこと。栄華玉台「―の身なれば」(2)金剛杵(しよ)の略。今昔一四「手に―を取り」(3)金剛界の略。(4)金剛身(しん)の略。(5)金剛草履の略。義経記二「腹巻着て―履いて」
―‐いんこ【金剛鸚哥】‥ガウ‥
―‐かい【金剛界】‥ガウ‥
―‐かい‐ほう【金剛界法】‥ガウ‥ホフ
―‐かい‐まんだら【金剛界曼荼羅】‥ガウ‥
―‐がき【金剛垣】‥ガウ‥
―‐きょう【金剛経】‥ガウキヤウ
―‐けつ【金剛_】‥ガウ‥
―‐けんご【金剛堅固】‥ガウ‥
―‐こうたく【金剛光沢】‥ガウクワウ‥
―‐ざ【金剛座】‥ガウ‥
―‐ざおう【金剛蔵王】‥ガウ‥ワウ
―‐さく【金剛柵】‥ガウ‥
―‐さく【金剛索】‥ガウ‥
―‐さくせいき【金剛鑿井機】‥ガウ‥
―‐ざくら【金剛桜】‥ガウ‥
―‐し【金剛子】‥ガウ‥
―‐しゃ【金剛砂】‥ガウ‥
―‐しゅ【金剛手】‥ガウ‥
―‐しょ【金剛杵】‥ガウ‥
―‐じょう【金剛乗】‥ガウ‥
―‐しん【金剛心】‥ガウ‥
―‐しん【金剛身】‥ガウ‥
―‐じん【金剛神】‥ガウ‥
―‐せき【金剛石】‥ガウ‥
―‐ぞうおう【金剛蔵王】‥ガウザウワウ
―‐ぞうり【金剛草履】‥ガウザウ‥
―‐ち【金剛智】‥ガウ‥
―‐ちょう‐ぎょう【金剛頂経】‥ガウチヤウギヤウ
―‐づえ【金剛杖】‥ガウヅ
―‐どうじ【金剛童子】‥ガウ‥
―‐どうじ‐ほう【金剛童子法】‥ガウ‥ホフ
―‐ばん【金剛盤】‥ガウ‥
―‐はんにゃ‐きょう【金剛般若経】‥ガウ‥キヤウ
―‐ふえ【金剛不壊】‥ガウ‥
―‐ぶっし【金剛仏子】‥ガウ‥
―‐やしゃ【金剛夜叉・金剛薬叉】‥ガウ‥
―‐やしゃ‐ほう【金剛夜叉法】‥ガウ‥ホフ
―‐りき【金剛力】‥ガウ‥
―‐りきし【金剛力士】‥ガウ‥
―‐れい【金剛鈴】‥ガウ‥
ね、例示された熟語の数が半端じゃありませんでしょ。しかもそのほとんどが仏教用語。ご興味のある方はどうぞご自分でお調べの程を。
例によって、もう一つ独立に見出しが設けられておりました。
こんごう【金剛】‥ガウ (1)能の家の一。(2)金剛流の略。(3)金剛座の略。
―‐ざ【金剛座】‥ガウ‥
―‐りゅう【金剛流】‥ガウリウ
ここでも、やっぱり能楽関係は別扱いでした。「広辞苑」のこだわりは徹底しています。
しかし、圧倒的な例示熟語にも漏れている言葉があるのに思い当たりました。郷里で毎日のように眺め、遠足やハイキングなどで幾度と無く登ったていた象徴的な山、金剛山。大阪周辺に育った人間でこの山に登ったことのない人などいないはずです。楠正成で有名な千早城址もありますしね。これをないがしろにするわけにはまいりません。ということで、ひいてみると
こんごう‐さん【金剛山】‥ガウ‥(1)大阪府と奈良県にまたがる金剛山地の最高峰。海抜一一二五メートル。西麓に千早城址がある。高間山。(2)朝鮮半島の東部、太白山脈の北部の山。海抜一六三八メートル。全山が黒雲母と花崗岩から成り、一万三千峰と称され、長安寺・神渓寺などの伽藍と相まって景勝の雄をなす。クムカン山。
へえー、しらんかったなあ。朝鮮にも同じ名前の山があったなんて。古代大和王朝時代には朝鮮から帰化した人々が技術文化の中心を担っていたということですが、そういうことと、なにか関係があるのでしょうか?
ほかにも、「金剛寺」と言うのを思い出したのでひいてみました。
こんごう‐じ【金剛寺】‥ガウ‥大阪府河内長野市天野町にある真言宗の寺。行基(ぎようき)の開基と伝え、南朝の帰依をうけた。天野行宮(あんぐう)。女院高野ともいわれる。
なんと、行基菩薩がつくったお寺だったとは知りませんでした。
ぎょうき【行基】ギヤウ‥奈良時代の僧。和泉の人。道昭に師事。畿内を中心に諸国を巡り、民衆教化や造寺、池堤設置・橋梁架設等の社会事業を行い、行基菩薩と称された。初め僧尼令違反で禁圧されたが、大仏造営の勧進に起用され、大僧正位を授けられた。(668〜749)
郷里の周辺には行基にまつわる史跡がありまして、光明池や家原寺が有名です。家原寺はなんと、行基の生家だったのですね。このお寺には、池があるのですが、その池に住む魚はすべて片目であるということで、これは、柳田国男の「妖怪談義」にも出てくる話なので、けっこう知られている伝説?なのかもしれません。
子供の頃は1月15日に行われる「家原のとんど」に毎年のように行ってました。本尊の文珠菩薩が日本三大文珠のひとつで「知恵の文珠さん」なので、入学などの祈願文を落書すると、受験に成功すると信じられていて、私も例に漏れず、鉛筆や白墨なんかで伽藍にやたらめったら落書きしたのを覚えてます。現在は落書きの代わりに、願い事をハンカチに書いて貼ることになっているそうですが。
! こちらに簡単に種類とその特徴をまとめておきます
| 洋紙ペーパー |
最も一般的な紙ヤスリ |
| 空研きペーパー |
木工研磨に最適。目詰まりしにくい。 |
| 布ぺーパー |
鉄サビ落としなど金属用。裏地が布製のため丈夫。 |
| 耐水ペーパー(水ペーパー) |
水にぬらして使う。目詰まりすることなく研磨できる。 |
| ポリネットシート |
メッシュのため目詰まりしにくく、裏表両面使用できる。 |
| ラッピングフィルム |
粒子が非常に細かく均一なので精密研磨向き。 |
| エメリーペーパー |
裏地が和紙。柔らかくツヤ出しに効果が大。プラスチックやアクリル研磨向き。 |
! 気持ちが大変によくつたわってとても実感的な表現です
なんで?というのは、詳しく聞かないでくださいね。でも、毛布ってこんなにやわらかで暖かだったのかと感じた、あのときの感触と気持ちはわすれられません。意味深だなあ・・・
! 「風姿花伝」と能曲「木賊」の関係
ご存じこれは、世阿弥元清が、父観阿弥の芸風・遺訓を基にして著した能楽論書で、能の命である「花」の考察を中心に、稽古、演出、演技、芸位などに関する工夫や心得を記した芸論の集大成です。
で、件の「木賊」は、ご推察のとおり、世阿弥の作。みなし子を連れた都の僧が木曾の山奥で木賊刈りの老人にあい、問わず語りに老人が、昔行方しれずとなった子は舞が好きであったといいながら、物狂わしく舞いはじめ、それを見たみなし子が父親と知り、ついに名乗りあうと言う筋で、ただ、それだけなら、別になんてことないのですが、この能曲「木賊」にはおもしろいエピソードがあります。
江戸時代初期にある能役者がこの老人の木賊を刈るまねが得意で、なんというか「天下の妙」を誇っていたのですが、あるとき観客の一人が片隅で笑っているのに気づき、問いただしてみるとこれが本職の木賊刈り。すまなそうに「太夫さんの手つきじゃ木賊は刈れぬ」といわれて感じ入り、その木賊刈りに弟子入りして芸を極め、その名をいよいよ高めた、と言う話なのですが、どうもこれはせっかくのおもしろい話を「稔るほど頭をたれぬ稲穂かな」の伝で、陳腐な教訓話に仕立て上げてしまったために、せっかくの世阿弥の能芸論がぶちこわしになっているのが、残念なところです。
世阿弥は「物まねを極めてそのものにまことに成り入りぬれば似せんと思ふ心なし」とはいっているけど、さらに加えて「遊女美男などの物まねをよく似せたらば、おのづから幽玄なるべし」。しかし「田夫野人、乞食非人」のたぐい、つまり木賊刈りなどの役割は美しく見せるような一工夫をしなければ芸にはならない。つまり、そのしぐさにある意味での「花」が必要だ。ということを述べているのです。
"しかれば、道を嗜み芸を重んずるところ、私なくば、などかその徳を得ざらん。ことさら、この芸その風を続ぐといへども、自力より出づるふるまひあれば、語にもおよびがたし。その風を得て、心より心に伝はる花なれば、風姿花伝と名附く。"(「第五 奥儀に云ふ」より)
というわけ。
余談ですがこの「風姿花伝」、今は、私の様な不埒者でも、岩波文庫で自由に読むことが出来ますが、本来は、観世家、今春家などに秘蔵されていたもので、1909年に吉田東伍校駐『能楽古典世阿弥十六部集』が刊行されるまで、一般には公開されていなかったんだそうです。こういう話を聞くと、本当に良い時代に生まれたものだと、いまさらながらに感激してしまいます。
「初心忘するべからず」というのも世阿弥の言葉なのだそうです。この言葉、世阿弥にさかのぼるとは、今まで知りませんでした。感動を新たに致しました。
! レンズ豆
意外なことに、レンズ豆の方がレンズの語源だったということがわかってしまいました。
レンズ豆は、西アジアから地中海沿岸地域が原産地で、主産地。聖書の記述にも出てくるというから、その栽培植物としての歴史は相当な物です。緑色、緑褐色、あるいは黒色の斑紋のある淡赤色などの種類がありますが、日本では、なじみが薄く、デパートや輸入食料品を扱っている店に売っているくらい。プロテインが多く含まれ、栄養価も高くて、ヨーロッパではごく普通の料理に使われるそうです。レンズという言葉は、もともとはラテン語で、この豆のことを指していたんだそうです。
で、ここからが本題。
この「レンズ豆」は、和名を「ヒラマメ」といって、その名のとおり平たく押しつぶされたような形をしています。このため、昔のイタリアの人々は、レンズ豆のかたちをしたガラスを「ガラスのレンズ」と呼び、それがいつの間にか、「レンズ」という言葉だけになって、世界中で使われるようになったというわけです。
いやはや、勉強になりました。
しかし、そういや、ほかにもひよこ豆なんてのがありました。こっちはまさかそういうことはないだろうなと、ネットを探してみたら、こういうページがありましたので、ご紹介しておきます。
! ひよこ豆.com / hiyokomame.com
もちろん、ひよこ豆のことも、レンズ豆のことも、そのほかの豆のことも紹介されています。参考になります。
! おろし金
大根やショウガ、わさびなどをすりおろす器具で、穴の開いた金属板に小さな棘がならんでいるタイプが一般的ですが最近はプラスチック製のものも多いですね。昔、大根用には刻み目を入れた竹の板を並べたような構造のものもあったようです。
わさびをすりおろすには鮫の皮を張った板を使うのが正式だと通の方はおっしゃいますが、なに、味が変わるわけじゃあありません、とNHKの料理番組で有名な日本料理のコック?さんが言ってました。要はとげの細かさということらしいですね。
鮫の皮のとげとげは、あれは実は歯が変形したものだそうで、顕微鏡で見ると鮫の口の中にある歯と同じ格好、構造をしているのだそうです。これを板に張り付けたものは一種の板ヤスリと言うこともできますね。
カタツムリやナメクジの口はヤスリのようになっていて、これで植物の表面を削り取って摂取しているのだそうです。体は柔らかそうに見えるんですが、固い器官をもっているのですね。
ネコの舌もざらざらしていて、これでもわさびが下ろせるんじゃなかろうかなんて考えたりもしますが、そういえば、宮沢賢治の「セロ弾きのゴーシュ」のなかに、やってきたネコの舌でマッチをつける場面がありました。あれもきっとネコの舌をヤスリに見立ててのことなのでしょう。
! 手仕上げで精密な平面を出すために使われるものです
図書館で見つけた「技能ブックスシリーズ7手仕上げのベテラン(大河出版社)」を見て、キサゲ処理の本当の意味を理解。
キサゲというのは、機械加工では出すことが出来ない精密な平面を作るなど細かな調整のために使われるものだったのですね。
ここで使われるキサゲというのは、平ノミのような平キサゲと、反った槍の穂先のようなささばキサゲです。ささばキサゲは、ちょうど木工でいう槍がんなにあたりますが、主に曲面を仕上げるのに使われます。
平キサゲのほうは、柄の後端に腰当がついています。材料に刃をあてがい、腰を使って押すようにしながら面を削っていくのです。
キサゲた面には当然のことながら刃の痕が残ります。このとき、刃を進める方向や力の入れ方によって、おのずから、元禄(市松)三角、三日月、千鳥などと呼び慣わされる模様が浮かび上がります。
もちろん、模様そのものによる精度の差はありませんが、これはなかなか美しいもので、ただ外観のためだけに模様をつけることさえもあるほどです。この装飾のためのキサゲ処理は工芸の分野で活用されています。
また、機械のすべり面などに油たまりを作るためにもこのような模様を意図的につけることもあるようです。
キサゲ処理作業については、こちらのページに丁寧に詳しく解説されています。
! 精密な平面
平面といえば、左甚五郎があるとき2枚の板に鉋をかけてその面を合わせると、力自慢の侍もひきはがすことが出来なかったという逸話があります。すばらしく精密な平面になるように鉋掛けする左甚五郎の腕をたたえるお話です。
このエピソード、かなり眉唾物ですが、たしかに塗れたガラス板など、2枚合わせると引き剥がすのが困難になるのは、私も経験がありますので、あながち嘘ともいえません。
が、よくかんがえてみれば、このはなし、片方が凸面で片方が凹面であったとしても、隙間なくぴったりくっつきさえすれば、成り立ってしまいます。つまりあわさる面が正確な平面でなくっても良いのです。
では、定盤のように基準となる平面がない場合に、正確な平面を作るにはどうしたらよいのか?
2枚の板をすりあわせるだけでは、力の加減によってかならず、片方が凸面で片方が凹面になります。これは、反射型天体望遠鏡のレンズを自作するとき、2枚の円形のガラス板に金剛砂を塗って気長にすりあわせて作ることでもわかります。蛇足ですがこのレンズ作り、ほんと根気がいるんですよね。
正確な平面を作るには、3枚の板を交互にすりあわせる「3枚合わせ」という方法をつかうのです。
3枚あわせの工程については、砥石の例ですが、こちらのページに平面を作るまでの試行錯誤の過程を含めた丁寧な解説がありますのでご紹介します。