念のためと思って確かめたら、参考資料としてリンクしようとしたページが無くなっていました。検索してみましたが見つからず、仕方がないので自分の鉛中毒関係のメモから、該当すると思われる部分をここに転記しましたので、これでご勘弁ください。
鉛の粉じんや蒸気などを吸い込むことによって鉛中毒となる。
鉛電池や鉛顔料の製造や鉛原料の運搬や、鉛ライニング作業などの仕事でばく露されることがある。おそらく、江戸時代まで、刀鍛冶に鉛中毒が多発していたのではないかと推測される。
刀は鉄で出来ているが、それを硬く焼き上げるためには、熱い鉄を打つだけではなく、適度な温度に冷やす必要がある。熱い鉄を水などで急激に冷やすと硬くはなるが脆くなり、刀としては役に立たない。溶かした鉛で冷やすと、急激にではないが、適度に温度を下げ、良い刀が出来る。この技法を「なます」といい、鉛の語源とも言われている。「なます」時に鉛の蒸気が発生し、刀鍛冶は、それを吸い込む機会が多かったと推測される。
鉛の蒸気は空気中で急速に冷やされ、微細な粒子になる。これらは容易に呼吸とともに肺から血液へと移行する。原料としての鉛粉末より微細であり、体内への移行率は高い。
吸収された鉛は骨髄や肝臓、脾臓などの組織に取り込まれる。鉛は体内の鉄と似たような振る舞いをするが、人間には鉛を排泄する器官はなく、蓄積していく。蓄積した鉛は、貧血を起こし、神経麻痺を起こす。特徴的なことは、運動神経、ことに伸筋系の運動神経麻痺を起こす。
その結果、屈筋系は麻痺が強くなく、伸筋系に麻痺が強いというアンバランスな状態を生み出す。そのアンバランスは、筋肉が管状になっている組織で顕著である。すなわち、管の内空を拡げようとする伸筋系が働かず、管を狭めようとする屈筋系が優位となる。狭めようとする屈筋系も正常な動きではなく、管の内空が閉鎖された状態か痙攣した状態となる。
筋肉が発達した管状の組織は、胃や腸などの消化管と中動脈である。腸内に食物が運ばれてくると、腸は自動的に蠕動運動を始める。ところが、鉛中毒であると腸が蠕動を起こさず痙攣してしまう。腸の痙攣は腹痛として感じられ、特に大腸の痙攣痛は疝痛と呼ばれ、強い痛みとなる。これを鉛疝痛と呼ぶ。
中動脈は鉛中毒では収縮するため、血流量が極端に低下する。その結果、顔色は青白くなる。慢性的な鉛中毒は、血流量の不足とともに、貧血があるため、全身の臓器が慢性的酸素不足であり、機能不全を伴っている。そのため、痩せが強い。
四肢、特に上肢は伸筋が機能しないため、下垂手となる。
まとめてみると、慢性的な鉛中毒患者は、腹痛のため身を屈め、貧血と血管の収縮により青白い顔をし、手は常に垂れており、その様相は、まさに柳の下に出現した幽霊のようである。ただし、映画や明治時代に描かれた四谷怪談のお岩は、慢性砒素中毒の症状と似ている。
鉛中毒の予防
鉛取り扱い業務には、鉛だけではなく銅や亜鉛の精錬業務も含まれ、それらの原料や製品の移動や運搬業務なども含まれる。そのほか、鉛蓄電池の製造・解体、電線やケーブルの被鉛及び解体作業、鉛合金が含まれるものの製造・修理・解体などもある。また、ゴムや絵の具、釉薬、ガラスなどにも含まれる場合があり、その場合は予防措置を執らなくてはならない。
特に鉛管切断、鉛活版製版、はんだ付け、鋳造では、鉛の蒸気、ヒュームが発生し、容易に肺から体内に吸収される。神奈川の某鉛インゴット製造工場の暴露状況をみると、鉛中毒患者の9割が鉛ヒュームの吸入により起こっていた。また、埼玉の某ステアリン酸鉛製造工場では、粉体を扱っているためか、経口による吸収がほとんどであった。すなわち、鉛の場合は、経口及び経呼吸器による暴露がほとんどで、経皮吸収はない。
はんだ付け作業は鉛作業の代表例のように思われているが、はんだ蒸気の成分を調べると、鉛ヒュームより砒素やその他の化学物質暴露の可能性がある。現在では、鉛含有量の非常に少ないはんだや無鉛はんだなどが使われ、大手電機メーカーでははんだ作業を機械化するか、局所排気装置を用いることにより、鉛中毒の防止に努めている企業がある。具体的な暴露防止策
先ずは、作業環境中の鉛粉じんの実態を把握する必要がある。そのために、作業環境測定を実施することが義務づけられている。
ヒュームにしても微細な粉じんであることから防塵マスクが、体内への鉛の侵入を防ぎ、中毒症予防には効果的である。また、発じんが強い場所では、保護眼鏡の使用も考慮すべきである。そして、粉じんを職場外へ持ち出さないように、作業着に付いた粉じんをブラシやエアーなどでよく落とし、作業現場外で着替える必要がある。防塵マスクは毎日点検し、粉じんのないところで保管し、修理、清掃、フィルターの交換をこまめに行う。常時作業に従事する場合は特に簡易粉じんマスクの使用はさけるべきである。
発じんの可能性のある職場を湿潤環境にすることも予防方法として効果的な方法である。最も良い予防方法は遠隔操作による隔離室で作業を行うことである。
発じんの強い作業に労働者を従事させる場合は、暴露しないよう発生源対策が必要である。そのためには、局所排気装置を設置する必要がある。局所排気装置には設置基準があり、その形態により、吸引排気能力が決められている。
そして、作業者自身が鉛に暴露されているかどうかについて、実態を調査する必要がある。鉛中毒予防規則に基づく健康診断の目的は、体内摂取状況の把握、早期の健康影響の把握、健康障害の発見である。
このために、健康診断では、鉛中毒に関連する症状の聴取とともに、血液中の鉛の量、尿中のデルタアミノレブリン酸を測定する。