《医療保険制度に関する埼玉県保険医協会の見解》



 下記見解は、厚労省、首相官邸などへ地域医療を守る医療現場に携わる医療提供側の立場から提言したものです。


政府医療制度改革案に対する埼玉県保険医協会の見解(2002.1)

   

 政府改革案は、医療の本質を無視した医療費抑制を目的としたものです。療養病棟に6ヶ月を越えて入院する患者を一律に「社会的入院」とみなし、保険給付を大幅に削減することでの病院からの追い出し。サラリーマン本人負担・老人一部負担の引き上げなど患者自己負担の拡大。「医療の標準化」による保険診療の縮小(患者負担の増大)。保険者と医療機関との直接契約による診療費値引きなど患者のフリーアクセスの制限や、病院の株式会社方式導入という医療への市場原理を持ち込む内容を含んだ、社会保障理念を欠いた、公的保険給付を縮小させる責任転嫁の改革です。
 政府の改革が実施されれば、受診抑制に拍車がかかり、疾病の早期発見・早期治療は妨げられ、疾病の重症化が起こります。当会は、諸外国と比べて高い医療用機器・材料や薬の価格を引下げること、医療への国庫負担を元に戻すこと、「いつでも、どこでも、誰でも」お金の心配なく受診できる国民皆保険制度を守ること、患者に必要な医療が提供でき医療機関経営が成り立つ診療報酬を保障することを主張し、国民の命と健康を守る医師・歯科医師として「政府改革案」の再検討を求めます。


医療における混合診療に対する埼玉県保険医協会政策部の見解(2002.1)

   

 公的保険以上の特別な医療を受けたい場合は、患者が自己負担でその費用を支払うという政府案は、医療費の国庫負担を減らし、医療費抑制を目的とした政府の意図と経済界から要望されている医療分野への市場原理導入から出された案であり、医療の本質を無視したものです。
 政府の混合診療には問題があります。@医療を受ける患者の支払い能力により、医療の質に格差が生じるため、平等に医療を受ける国民の権利が奪われます。A患者や患家は特別な医療を求めるため、公的保険を受ける費用負担に加え、特別な医療を受ける費用負担を支払う二重負担となります。またその結果、高額な医療を求める患者側と高額な医療を提供したい医療機関側の意識から医療費は高騰します。B政府の国庫負担削減政策により患者自己負担は増大し、診療報酬削減により公的医療保険の質は低下します。C経済的弱者の受ける医療は最低限の医療レベルになります。また、受診抑制が生じ疾病の早期発見・早期治療が妨げられ、疾病の重症化が起こります。
 以上から混合診療は国民にとって有益とは言えず、当会政策部は国民皆保険制度の堅持、医療における国庫負担を増加させるべきと主張します。

  

厚労省改革案に対する埼玉県保険医協会の見解(2001.9)


 厚労省の改革は、社会保障における国家的責任を国民に転嫁するものです。医療費負担では国民の自己負担を年々増加させ、同時に国庫負担率を結果的に減少させてきました。近年財政緊縮に偏向し、医療供給の質の低下を増長する医療施策に終始しています。結果的に患者負担増、3時間待ちの3分診療、小児救急医療体制不備などは改善されていません。又、医療機関の医療従事者に労働超過が現れています。医療従事者はこれまで、使命感と献身的な努力で医療現場を支えてきましたが、多発する医療事故に見られるように精神論での改善は限界です。現在の医療制度には構造的な欠陥があり、上述の問題は起こるべくして起きていますが、今回の改革案では何も解決しません。
 官僚の天下り先の製薬企業は他産業に比べ、毎年高い収益を継続しています。諸外国に比べ高い薬剤価格が原因です。国民に対して不透明な薬価決定システムを改めることが必要です。又大学の研究の一部や国が責任を持って行うべき医師養成の費用を保険財源で賄っている現状も改革が必要です。現在の医療制度を維持し、構造的欠陥を改める必要があります。患者国民の負担増大の改革案は医療制度改善ではありません。


地域医療を守る現場医師歯科医師からの提言(2001.9)


 日本の医療は低医療費で高い効果を上げ、世界各国がうらやむ保険制度であると評価されています。いつでもどこでも所得に関わらず誰でも医療が受けられる皆保険制度を堅持すべきです。米国のマネジドケアのように医療費抑制から医療の中身に保険者が強く介入すると、国民は必要な医療が受けられず、早期治療が受けられなくなります。米国では高所得者が良質な医療を受けるため充実した民間保険に加入し、低所得者は不十分な医療しか受けられず、無保険者が4千万人もいる状態です。国の責任において医療の質と量は確保されるべきです。医療費抑制の観点から医師の裁量権が奪われては質は保てません。国民が米国のような医療制度を望むという同意があるなら別ですが、良質な医療を受けるには医療機関に充分な医療スタッフと設備が必要ではないでしょうか。それには医療費30兆(うち国の負担約7.5兆)は高くないという発想の転換と国民の負担増ではなく、国の予算配分を見直す事が必要です。

高齢者負担に対する埼玉県保険医協会の見解(2001.9)


 医療情報の提供は、インフォームドコンセント(以下IC)を行う上で重要な手段です。しかし診療録開示はICの必要条件ではなく、患者の求めに応じて医師が個々の患者の病状や開示要求の目的により、個別的な判断でなされます。したがって、IC=(イコール)カルテ開示といった短絡的な認識をするべきではありません。医師はカルテ記載にあたり、患者の主訴や症状、理学的所見や検査結果を客観的に記録し、診断や治療に関する科学的根拠が、論理的に確認できる診療記録を作成すべきです。このようなカルテを記載し、カルテ内容を充実させるには、十分な時間と余裕ある診療体制が必要です。しかし現状の医療制度、医療環境では極めて困難です。
 カルテ開示やICを行うにあたっては、必然的に診療時間内に診療する患者数は限られます。このため医療環境の改善を欠いた場合は、診療現場に混乱をもたらし、安定的な医療供給体制に支障をきたします。また、診療可能な症例数が限定されるため患者の診療の求めに応じきれず、診療を拒否せざるを得ない事態も予測されます。カルテ開示の法制化においては、先行して医療制度や医療環境の改善が必要です。


医療情報提供に関する埼玉県保険医協会の見解(1999.3)


 医療情報の提供は、インフォームドコンセント(以下IC)を行う上で重要な手段です。しかし診療録開示はICの必要条件ではなく、患者の求めに応じて医師が個々の患者の病状や開示要求の目的により、個別的な判断でなされます。したがって、IC=(イコール)カルテ開示といった短絡的な認識をするべきではありません。医師はカルテ記載にあたり、患者の主訴や症状、理学的所見や検査結果を客観的に記録し、診断や治療に関する科学的根拠が、論理的に確認できる診療記録を作成すべきです。このようなカルテを記載し、カルテ内容を充実させるには、十分な時間と余裕ある診療体制が必要です。しかし現状の医療制度、医療環境では極めて困難です。
 カルテ開示やICを行うにあたっては、必然的に診療時間内に診療する患者数は限られます。このため医療環境の改善を欠いた場合は、診療現場に混乱をもたらし、安定的な医療供給体制に支障をきたします。また、診療可能な症例数が限定されるため患者の診療の求めに応じきれず、診療を拒否せざるを得ない事態も予測されます。カルテ開示の法制化においては、先行して医療制度や医療環境の改善が必要です。