たびひとの
 

十和田湖"靴"物語

 

2006.02

十和田湖畔の郵便ポスト、ライトアップのための照明が付いている

 
 
 
 8時56分発 はやて9号 に乗り込み、席につくと早速缶ビールを開けた。

落ち着いたところで、足を組もうと右足を上げた。

違和感がある。

靴底がおかしい。

靴底の厚いゴムの、右の親指の付け根あたりが、歯が抜けたように欠けている。

よく見るとそこだけではない。

靴底全体に何箇所かゴムが欠けている、ヒビ割れもある。

2月の十和田湖への旅なので、雪道対策にトレッキングシューズを履いてきた。

トレッキングシューズと言っても本格的なものではないが、靴底が厚く、溝が深いので雪道を歩くには十分足りると思

い、しば らく履いていなかったが下駄箱から引っ張りだしたのだ。

手入れもせずにほっておいたため、かなり汚れていたので洗って2日ほど乾かした。

風呂場で洗ったのだが、洗剤には バスマジックリン を使った、たまたま側にあったので。

大丈夫か…、と一瞬迷ったが、人の肌の触れる浴室に使うものだから大丈夫だろうと思い、使ってしまった。

そのせいかどうかわからない、何年も履いていなかった靴なので、それに手入れもしていなかったので、耐用年数を

すぎていたのかもしれない。

洗い上げてきれいに乾いた時は問題はなかったのだが。

足元の、新幹線の床の上を見ると小指の先ぐらいの黒い塊がいくつも落ちている。

左足も見た、右の靴底ほどひどくはないもののやはりヒビ割れがいくつも出来ている、欠けているところもある。

失敗だった。

実にまずい。

私が今回利用しているのは はやて9号 のロザ(グリーン車の座席指定席のこと)なのだ。

この車両で、こんなボロボロの靴を履いて座っているのは居心地が良くない。

ロザなんて贅沢をしたのがまずかったのだが、実はそれほど贅沢とも思っていない。

普通に東京八戸間をハザ(普通車の座席指定)で往復した場合は、28,820円。

JRの特企券(とくとくキップのこと)三沢往復きっぷ(普通車)は、28,800円。

同じく三沢往復きっぷの(グリーン車)の場合は、30,800円。

特企券を使った場合の普通車とグリーン車利用の差額は、2,000円しかない。

片道では1,000円の差しかないのだ、それでロザにしたのだが…。

はやて9号 はすでに走り出している。

ビールを飲みながら考えた。

八戸からJRバスに乗り換えて、十和田湖まで行く予定だ。

その乗り換え時間が1時間8分ある、その間に駅前のデパートか靴屋さんを探して買うしかない。

余計な出費だがしかたがない、ビールを一口飲んだ。

 
 
 
 八戸駅には予定通りの12時07分に着いた。

JRバス おいらせ93号 は、西口から13時15分の発車だ。

八戸駅は初めてだが、出口の地図をみると西口はバスターミナルぐらいしかないと思われるので、東口へ向かった。

ところがデパートらしき建物が見えない。

靴屋さんの看板も見えない。

ロータリーの右側に大きな建物があったので、期待して入ってみたが、公共の建物のようで、喫茶店ぐらいしかないよ

うだ、あとは会議室やホールのようだ。

駅前に交番を見つけ、聞いてみた。

「近くに靴屋さんはありませんか」

「うーん、近くにはないんですよ」

「電車で3分ぐらい乗れば、デパートがあるから…」

八戸駅は新市街にあり、本来の八戸の中心街から離れているらしい。

印を付けてくれた地図をもらい、礼を言ってタクシー乗り場へ急いだ。

東京であれば電車で3分ほどなら、1時間あれば充分だが、東京のように地下鉄や山手線が2〜3分おきにあるわけ

ではない、まして昼時だ、タクシーにした。

タクシーの運転手さんに、「○×デパートまでお願いします、もし運転手さんが大きな靴屋さんを知っていたら、○×デ

パートよりも近くにあれば、そこに行ってほしい」と告げた。

彼は靴屋さんに心当たりがあるらしく、そちらに向かった。

10分ほどで着いたが、商売替えしていたようだ、元○○靴卸センターだったらしい。

運転手さんは、恐縮したが、そのまま○×デパートに向かうことにした。

途中で「どんな靴がほしいんですか」と聞くので、

これから十和田湖に行くのに、靴が壊れてしまった、雪道を歩ける靴、この地方の皆さんがはいているような靴がほし

い、と告げた。

「ああ、それなら○×デパートまで行かなくても、ありますよ」と言って、方向転換した。

一瞬いやな予感がした、ドカ靴、ゴム長靴を売っている店に連れてゆかれるのではないか…、と思ったのだ、帰りの

新幹線、それもグリーン車にゴム長で乗るのはできればさけたかった。

しかし時間もない、タクシーのメーターもすでに2,000円を越えた、まかせることにした。

予想通りだった、ついたのは△◇ホームセンターだった。

やはりゴム長靴ばかりだった、スニーカーも数足あるにはあったが、雪道を歩ける靴ではない。

980円のゴム長を買った。

タクシーに戻ると、運転手さんはメータを倒して、

「よけいな所へ連れて行ってしまったので、代金はここまででいいです」と言った、2,990円だった。

「えっー、ほんとに、わー助かりますう」。

980円の靴を買うのにタクシー代に何千円も掛けたのでは、懐具合はもちろんだが、気持ち的にクサル、ありがたい

話だった、親切な運転手さんだ。

13時すこし前、八戸駅にもどり西口のバスターミナルでタクシーを降りた。

ほんの少しだが代金に添えてお礼をした、彼は遠慮したが、こちらも助かったので、受取ってもらった。

実際、ゴム長で大正解だったのだ。

 
 
 
 
 バスはほぼ予定通りの時間で、十和田湖休屋についた、15時35分。

途中十和田市でわずか8分ほどのトイレ休憩があった、ちょうど半分くらい来たところだ。

バスの乗客は5人、1人が途中で降りた。

焼山をすぎ、奥入瀬渓流に入ると雪は深くなった。


 十和田湖は東北有数の観光地で、春から秋にかけては観光客の絶える事がない。

特に秋の紅葉シーズンは宿の予約を取るのも難しいほどだ。

八甲田から十和田湖、さらに十和田湖から八幡平や田沢湖に抜けるルートの紅葉はすばらしく、拙い文章ではその

美しさを伝えることができない。

素人写真では、その美しさの10分の1も表現することができない。

若いころ、仕事=添乗で、何度もその美しさを堪能した。

だから冬の十和田を一度訪ねてみたかったのだ。


 ターミナルから今夜の宿、とわだこ○○ まで歩いて5分ほどだったが、風が強く雨も降っている。

道路には雪解けのためだけではない水溜りが出来ており、底の壊れた靴はすぐに水漏れし始めた。

ゴム長は正解だった、案内してくれたタクシーの運転手さんに感謝。

2月3日から26日まで「十和田湖冬物語」というイベントをやっている。

19時から津軽三味線ライブが行われる、それを見たいと思っていた。

19時からなので、宿のすすめで18時から夕食にしたが、フロントの人、このイベントについて、なぜか、そっけない印

象を受けた、気のせいだろうか。

料理がたくさん出てきた。

宿泊料金が10,000円なので、料理にはまったく期待していなかったので、予想外だった。

すべては食べきれないまま、部屋に戻った、腹がきついので10分ほど横になった。

失敗だった。

目が覚めると19時45分、ライブはもう終わる時間だ。

それでも乙女の像のライトアップを21時までやっている、その写真を撮るのも目的の一つ、今夜は満月の夜

天気は良くない、雪ではなく雨が降っている、風もある。

ゴム長を履いて出かけた、水溜りがある、道路は雪が凍りついてアイスバーンになっている。

十和田神社の参道に入ると、踏み固められた雪道になり、乙女の像まではそれほど苦労なく歩くことが出来た。

乙女の像の回りは雪が深い、ゴム長大正解。

湖から吹きつける風が強い、カメラの三脚が揺れるため、ブレる。

それでもわずかの間、雲間から満月がのぞいた、ともかくシャッターを押した。

 
 
 
 
 翌日は天気予報では曇り、午後から雨のはずだった。

しかし雨が降っている、風もあるようだ。

冬物語の期間中は10時に十和田湖の遊覧船が出る、パンフレットにそう書いてある、それに乗るつもりだった。

その前に再度乙女の像まで歩き、十和田湖と乙女の像の写真を撮る。

風は昨夜ほどではないものの、雨が強い。

湖畔で、ギャアギャアと鳥の鳴き声が聞こえる。

白鳥が餌付けされているのだ。

乙女の像から白鳥の群れまで、湖畔を歩いて行くことにした。

私の前に歩いた跡があったからだ、小さい足跡、女性のようだ。

雪はところどころ深いところもあったが、白鳥の群れまで大きな深みにはまることなく歩くことが出来た。

白鳥は水に浮かんでいると優雅だが、氷の上に上がるとヨタヨタとおぼつかない足取りで歩く、じれったくなるほどだ。

足跡の主が投げたと思われる餌(パン)が、風に押されて白鳥までとどかず、氷の上に転がっている、それを食べよう

と歩いてくるのだが、なかなかたどり着けないでいる。

少し傾斜しているためか、前のめりに転んだりする。

気がつくと9時45分だった、10時の船まであと15分しかない。

あわてて桟橋まで歩き始めたが、先ほどと同じように湖畔沿いの雪道を歩くことにした。

やはり小さな足跡が残っていたからだ。

失敗だった。

先ほどまでとは違い、雪が深い。

膝の上まで、時には股のあたりまでズボッ!と、もぐる。

小さな足跡はそれほど深く沈みこんでいない、くそっ、体重の違いか?

出来るだけその足跡の上を歩くようにするものの、たびたび深みにはまる。

雨が服の表を濡らし、汗が服の中を濡らす。

桟橋近くの乗船券売り場に着いたのは、3分ほど前。

「10時の船、まだ乗れますか?」

「都合で出ないことになりました」 アッサリと一言。

「あっ、…そうですか」 私もアッサリと一言。

予想はしていたのだ。

雪道を悪戦苦闘し歩きながら桟橋の様子を見ていたのだが、だれも船の方向に歩いて行かない。

客がいないのに船を出すわけもない。

「パンフレットに、冬物語期間中は10時の船があると書いてある、なぜ出さない?」

「書いてある以上、客は1人でも出すべきではないか!」

と、ゴネルような性格ではない、私はいい人なのだ。

すぐにあきらめた。

文句を言ったところで、天候を理由にされたらそれ以上は突っ込めない。

2階の休憩室に上がり、コーヒーを飲み、一息入れることにした、服の中が汗でびっしょりだ。

 
 
 
 八戸行きのバス おいらせ92号 は、バスターミナルを12時、定刻どおり出発した。

乗客は私の他にカップルが1組だけだ、同じ旅館に泊まっていた2人だ。

ゴム長靴はバスに乗る前に待合室で壊れた靴に履き替えた。

やはりゴム長で新幹線のロザに乗るのは気が引ける、この靴でもゴム長よりはましだろうと考えた。

船に乗ることが出来なかった後、バスが出るまで時間が余ってしまったので、冬物語の会場を見てみようと思い、歩い

てみた。

雨も止み、風もおさまっていたが、客は1人もいなかった。

イベントで使う雪像を自衛隊の人たちが修復していた。

昨夜の後始末をしている人、今夜の準備をしている人…、この時間に客が来ることは考えていないようだ、午前中の

イベントはないのだろう。

バスは宇樽部を通過中だ。

私がこのイベントを知ったのは3年前だったと思う、インターネットで冬の十和田の情報を探していた。

雪の十和田湖を訪ねてみたいと思い、いろいろ検索していた。

今年やっと訪ねることが出来るので、予定を立てるにありこのイベントに合わせた。

十和田湖に行くための交通機関については、ホームページに欲しい情報がなかった。

十和田湖冬物語のホームページには、アクセスのページはある、道路の冬季交通規制については詳しく載っている。

しかし路線バスなどの情報がない。

宿についても紹介するページはない。

それぞれ別のホームページで調べ、予定をたてた。

十和田湖に来て手に入れたパンフレットには、ホームページよりも詳しい情報は載っているものの、アクセスについて

はやはり道路の冬季交通規制が中心だ。

どうもこのイベント、十和田湖冬物語は、個人の旅行者が来ることを期待していないように思われる。

今朝、乙女の像に行く途中で、貸切バスが3台出発の準備をしているのを見た。

案内パンフレットには発時刻を載せているのに、出発しない遊覧船。

午前中観光客が来ることを想定していないイベント。

個人が利用できる交通機関について、記載していないホームページ。

これらを考え合わせると、団体客を呼ぶためのイベントだということが見えてくる。

団体客がバスで3台も来れば100人から120人ぐらいになるので、旅館はこの時期に従業員を動員して対応しても、

充分とはいえないだろうが採算は合うだろう。

遊覧船も同じだ、1人の客のために300人以上も乗れる船を1時間動かせば誰が考えても採算割れだが、100人の

団体客が乗れば採算割れはないだろう。

団体客誘致のために船の発時刻をイベントパンフレットに書く、ところがそれを目当てに個人の旅行者が来る、来てし

まう、それが実態なのだろう (たびひとの”邪推”です)。

団体客は旅行社やバス会社などが送客することになるが、旅行費用を安くして集客力を高めるために、コストを徹底

的に抑える。

そのために、特定の旅館や施設に集中送客を行う、そういう契約を結ぶ。

そうすることで宿泊代などのコストを安く抑えるのだ(特定の施設に集中送客するということは、そうではない旅館や施

設には原則として送客しない、ということでもある)。

イベントは集中送客される施設と、その団体客中心になる。

したがって十和田湖をあげて…とはならない (これもたびひとの”邪推”です)。

旅行社と集中送客の契約のある旅館や施設は潤い、団体で来た旅行者も楽しい。

では、個人客は?

週末は楽しいのかもしれない、平日とは事情が違うだろうから。

…つまり、そういうイベントなのだろう。

 
 
 
 
 おいらせ92号 は14時20分、八戸駅に到着した。

14時56分の はやて20号 で東京へ。

ゴム長はまるめて紙袋に入れてある。

靴底を家に帰るまでもたせるため、出来るだけ足を動かさないようにしてロザに座っていた。

それでもボロボロ黒い、指の先ぐらいの塊が床の上に散らばる。

隣の中年のサラリーマンの目が気になるが、彼は自分の抱えている問題でいっぱいのようだ。

18時08分、東京駅に着いた。

通勤時間帯で、乗り換えで混雑する駅構内を在来線に乗り換えるために歩いている時、右足が何かをふんずけた様

に感じた。

一瞬ふり返ると、黒いあんパンほどある塊が、1メートルほど後ろに転がっている。

私の靴のかかとだ、と、すぐに分った。

かかとがなくなってしまった。

私の靴はかかとがなくなり、健康サンダルのような状態だ。

恥ずかしいから、そのまま知らん振りして、乗り換えホームに急いだが、歩きにくい。


はやく帰り、靴を脱ぎたい。

 
 
 
 
 

 
 
 
 
十和田湖冬物語のホームページについて
 
後日あらためて「十和田湖冬物語」でホームページを検索してみたところ、以下のページが抽出された。
@http://www.pref.aomori.lg.jp/yuki/fuyu/
Ahttp://www.towadakofuyumonogatari.jp/main.html
Bその他(参加団体や共催団体のページ)
 いずれも問合せ先・事務局は(社)十和田湖国立公園協会となっている から、同じ団体が管理しているページのように思えるが、実際にはURLが異なるので別の組織らしい。
私がこの旅に出る前に見たホームページは、@である。
このページは本文に記したとおり、交通アクセスについての記載はほとんどなく、宿泊についてはまったくない。
しかしAのページには、私が知りたかった情報がきちんと載っている。
Aのページを見ると、このイベントは団体客偏重ではないかとする評価の根拠は崩れることになりそうだ。
しかし、私は@のホームページを参照し、実際に現地での体験を踏まえた上での感想であるので、訂正することはしなかった、その点をお断りしておく。
 
 なぜ同じ事務局を名乗るホームページが複数あるのか、その意図も、それぞれの公開時期もわからない。
また、なぜか相互のページの関連説明も、相互のリンクもない(2006年3月末現在)。
この2つのページはそれぞれ別のページであるから、Google/Yahoo!などの検索ページで検索した場合に、その時期やヒットする順番によって参照するホームページが異なることになる、そこから得られる情報も異なることになる 。
私が最初に検索したのは3年ほど前で、@のページがヒットした。
以来このページをお気に入りに登録し、今回もこのページを参考にした、 このページには十和田湖冬物語以外の情報は一切なかったので、このホームページが公式なものであろうと思い込んでいた、まさか別の公式(?)ホームページがあるとは思いもしなかった。
せめてリンクでもあれば欲しい情報を事前に手に入れることができ、もっと別のプランも有ったのではないかと思うと、残念だ。
 組織は異なっても観光客を誘致するという目的は同じはずである、同じ目的で、同じ名称とロゴを使い、同じ事務局を名乗ってホームページを公開しているのに、掲載している情報が異なるなら、相互にリンクを貼るぐらいの配慮 をしてほしいと思う、そうしてもらえれば見る側に対してかなり親切で有用な情報源となるど思うのだが。
 
 
 
 
 
 
 
 
壊れた靴
  この写真を撮ろうとして、靴底に水をかけたところ、
”泡”がたくさんでてきた。
やはり洗剤に問題があったようだ。
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
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