■「こまっちゃクレズマと音楽鑑賞会」
これは一般公開されない、スケジュール表にも載ってないコンサート。
だけど、お客さんはちゃんと大ホールを埋め尽くしてる。
そして、そのお客さんとは、ほぼ全員が15、16、17歳なのだ!
とある高校の音楽鑑賞会として企画された公演。
こまっちゃクレズマでは、時々、こうした学校主催のコンサートで演奏させていただく機会があるのだが、今回はちょっと趣向が凝っていた。
学校へお伺いして、ミーティングをかさねる中で、音楽担当の先生の、生徒たちへぜひライブ音楽の楽しさを伝えたい!という熱意が、とんでもない企画を生み出した。
こまっちゃクレズマ
おおたか静流
熊谷和徳(TAP DANCE)
この三者が、途切れる事の無いワン・ステージで、一緒に演奏する。
ありえるのか?
ありえるのだ!
その学校では、ダンス部の活動がさかんで、だけれども生徒たちは「踊りと音楽は別」と思っている。
音楽はBGM?
いや、一緒に共演できるんだよ、ということを教えてあげたい。
そんな話から、世界的タップダンサー、熊谷さんにも来ていただけたら・・・と妄想が膨らみ、あたってくだけてみようとしたら、本当に来てくださることになったのだ。
なんたる奇跡!ありがとう熊谷さん。事務所の皆様。
本番、4月28日。東京都下、某所の大ホール。
しかし、この手のステージは、実はとてもやりにくいのが常である。
満場のお客さん、だけど、この8人の出演者のことを少しでも知っている者は、果たして何人いただろうか。
こちらのことを全く知らない相手にいかにも親しげに話しかけるなんて、ステージでなくたって、したくないことだ。
まず「出会う」ことから始めなければいけないステージで、固い客席の扉を、誰があけるのか。
実際、それはおおたかさんだった。
彼女が、MCで生徒のこころを開かせて、いっきに場がほぐれた。
さすがである。
子供たち相手、同じ言葉の通じない相手、世界中のさまざまな場所で歌ってきた経験ゆえに、と言えば簡単だけれど。
「おおたか静流」から「シズリン」へ。
無理矢理にではなく、自然に、やわらかく、楽しく、空気を一変させてしまえるのは、おおたかさんならではである。
相手の見えないブロック塀にボコン、と穴を開けて、風通しをよくしてくれた。
そうやって演奏した、オリジナル曲の「ヴェトナミーズ・ゴスペル」
は、きちんと、歌詞まで客席に伝わっていったと思う。
拍手が、そう聞こえた。
そして、中盤からは場面を一新して、熊谷さん登場。
彼がタップ板の上でビートをたたき出すと、瞬間にして、客席の空気が引き締まった。
今度は、固くなるのではなく、その姿、その音に神経を集中させているのが、よくわかった。
熊谷、梅津、おおたか3人の即興。
音と言葉の連打!凄い!凄い!見ているこちらが高揚してしまう。
引き続き、熊谷ソロコーナー。
一個の楽器どころか、いくつもの楽器が共演しているかのように聴こえる、とてもスケールの大きいタップだ。素晴らしい!
バン!と決めたエンディング、客席から沸き上がる拍手の中、すかさずヴァイオリンが斬り込み、誘いをかける。
こまっちゃ登場で、ここから、「ハバナギラ」。
イントロでたっぷり踊ってから、テーマへ。
それぞれのソロでは、多田>梅津>関島>夏秋と、次々バトル。
これでもか!と楽器で向かってくる相手に、華麗な足さばきで立ち回り
を見せる熊谷。
靴のあらゆる面や点を使って多彩な音色をつくりながら、緩ませたり弾ませたり、高く跳んだ着地音で音を断ち切り、さらにはタップ板からも飛び出して、生でも音を高らかに響かせ、踊りまくる。
こんなタップに鼓舞されない訳がない。
こまっちゃは、それぞれ自分をぶつけていって、彼との演奏を楽しんだ。
悪いけど、客席のことなど、構ってらんない。自分たちが楽しくてしょうがない、幸福な時間だった。
(後から、彼には「リハでは7分だったのに、本番14分ですよ!やられたー!」と笑いながら愚痴られたけれど)
フィナーレでは、全員で「マイム・マイム」。
こちらも、間奏のsing!sing!風のリズムに乗せて、アドリブをたっぷり。
いい大人が、こんな風に、遊んでる。
このコンサートで、何か伝えられたとしたら、その一点につきるのかも知れない。
それでいい。それがいい。
だって、それが一番、素敵なことだから。
客席は、もう少しで踊りだしそうだったな。
惜しい!けれど、十分、客席の楽しさも、実感できた。
ありがとう、某高校の生徒さんたち、先生、スタッフや、出演のみんな。
あー、
こんな素晴らしいステージを、世界中のお客さんに見てもらうことができないなんて、残念でたまらないよ。
(了)
2010.4.29記
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