単発不定期エッセイ
 韓国日記 2008 Jun

一番残念な事は出発直前になってデジカメが壊れて修理に出してしまった事です。
文章だけの日記になります。

6月10日(火)

羽田は近くてありがたいが、国際線には見事に何もない。
ソウル金浦空港、税関で意外と手間取る。バスクラをバラバラにしてプチプチに包んでスーツケースに入れてあったのが怪しまれた様子だ。
「これはトランペットですね?」バスクラのベルを指して言う。
「それで、これはクラリネットが2本、いや少し太いな。ファッゴットですか?」
なまじ、楽器の知識があるらしくて面倒くさい。一人でそんなに色んな楽器を持って来ているのを怪しんでいる風だ。
「いや、これはそれらを全部組み立てて一本の楽器、バスクラリネットになります。」
アジア人の税関には珍しく、「オー!」といった欧米的な驚き方。
「バスクラリネット?」初めて見た楽器らしい。
後は、もう、さっさと片付けて早くいきなさい、といった仕草。
こっちもいたい訳ではないが、梱包に再び手間取る。

空港にはミニョンさんの弟子のSORAさんが迎えに来てくれていた。
「もう、来ないかと思いました。」
彼女は日本語が上手だ。
彼女の案内で急いで国内線へ。そこでSORAさんは帰る。 それほど乗り換えの時間がある訳ではない。

ウルチョンへ。
結局、到着は夜の8時過ぎ。
えらく時間がかかったものだ。
ここの空港にはパク・ジェチェンさんと彼の友人のが迎えに来てくれていた。
パクさんとは約1年ぶり、2年前は韓国で、去年は東京と所沢で一緒に演奏している。

ホテルにチェックインして、すぐそのまま晩御飯へ。
茹でた豚肉を野菜に巻いて食べるもの。
付け出し、とでも言えば良いのだろうか、キムチやら野菜やら小皿がテーブルいっぱいに並べられる。
これがいちいち美味しいから、気をつけないとメインが来る前にお腹が一杯になってしまう。
メインは当然の事だが美味しい。
肉と一緒に野菜がいっぱい採れるのが嬉しい。

ホテルはこちらではかなり当たり前のようだがラブホテルである。
でも、広いし奇麗だし、ネットは繋がるし、悪くない。
バスルームがガラス張りなのは気になるが、一人で泊まる訳だからそれもどうでも良い。

食事の後は2年前に太田恵資、早川岳晴と来たBE-BOPへ。
地元のミュージシャンがライブをやっているが、なんだか昔のキャバレーの箱バンみたいな感じ。
実際に箱バンで毎晩演奏しているそうだ。
ウルサン・ジャズ・フェスティバルの主催者のひとりのキムさん、ワールド・ミュージックのフェスを主催しているイさん、などが現れビールを飲む。
ファンファーレ・チョカリーア、エスマ、などなじみの名前が出てくる。 プランクトンも当然。日本の「スキヤキ・ミーツ・ワールド」とも連帯しているそうだ。


6月11日(水)

10時間近く寝る。おかげでスッキリ。
さすがに昨日は疲れていたみたいだし、韓国に来る前に仙台の母を見舞ってとんぼ返りしたりしていたのもこたえたようだ。

朝は食べずに昼食。ここでミニョンと久しぶりに再会。
昨日は疲れて寝ていたのだそうだ。
キムさんの奢りで、豆腐チゲのようなもの。
当然だけどいっぱいの付け出し。当然だけど美味しい。
その後かれのプロデュースする喫茶店へ。そこで美味しいコーヒーを飲む。
韓国では今、美味しいコーヒーが人気だそうで、サイホンとかドリップとか豆も炒り方もいろいろ凝っているようだ。
昔は薄いコーヒーやインスタントが主流だったのに・・・、今ではちょうど7、80年代の日本の喫茶店のようだ。

今日の仕事はテレビ局主催の野外での演奏。
我々のサウンド・チェックの前はボリビアのアンデス系のグループがやっていた。
あっという間のサウンドチェックの後はパクさんとソヤンさんに連れられてみんなでビビンバ屋へ。
ユッケビビンバが美味しい。
こう美味しいものが続くと体重の増加が心配だ。
サウンドチェックもたいしてやらないので、簡単なコンサートなのだろうと思っていたら、時間になったら1000人くらいの観客が小さなスタジアム形の観客席に鈴なりの状態。
ちょっとびっくり。

トップは子供たちのリコーダーのオーケストラ。控え室にいて音は聴こえなかったが、奇麗な制服を着た子供たちが廊下を走り回る。
我々はトリ前。我々の前にはアイドル・グループが出るらしい。
出番は15分くらいで収録は7分との事。
アイドル・グループ、歌って踊ってしゃべっての若い男の子達。うけているが、はっきり言って下手だ。

「アイドルの次はアバンガルド・グループの登場です。」どうやら人気者らしい司会者の紹介で我々はステージに上がる。
普通、このラインアップはなかなか考えられないけど、パクさんがいうにはこっちではわりと当たり前だそうだ。
さて盛大な拍手を受けてステージに出たのに、なかなかGOサインが出ずにステージ上で立ち往生。
どうやら、誰の音から始まるのか?とか、いまごろカメラ位置の確認しているらしい。
ライブなのに、本当にこっちのテレビときたら・・・。

ミニョンさん作曲の「コロベエ」が始まる。さっき、リハでちょっとやっただけだけどなんとか大丈夫。
でもバスクラは自分で良く聴こえない。
表には聴こえているのだろうか?
次は私の「K」を演奏したのだが、サックスを吹いてみてハッキリした。
モニターが聴こえないのだ。
さっきは自分の音が小さいのと、ドラムのリズムを聴いていればどうにかなったのだが、この曲でピアノが聴こえないのは致命的だった。
滅多には考えられないズレまくり。
この曲は普通の曲なのに、結果的には大アバンギャルドだった。
我々の後は大物演歌といった感じだったが、脇で楽器を片付けてると、何人かのお客がサインをねだってくる。
本当に、私なんかで良いのかなあ?と思いつつ、 「楽器片付けたらすぐ行くから。」とジェスチャーで伝えると、 「そんな事は後回しで今すぐ私にサインしなさい。そして一緒に写真を撮りなさい。」といった様子。かなり図々しい。

TVのあとはBe-bopへ。ここでは10時からの演奏だそうだ。
遊びに行って飛び入りでやるのか、もともと企画されているのかよくわからない。
お客さんはいるが、地元のバンドが我々が来るまでやっていたみたいだったので、 なんだかお客のおしゃべりを無理矢理中断させて演奏を始める感じ。
再び「コロベエ」、フリーで「ベサメ・ムーチョ」などを演奏。でも、なんで「ベサメ・ムーチョ」?
嫌いなわけじゃないんだけど・・・。
地元のテナー・サックスの人とのデュオもやらされる。
インプロは初めて、と言っていたけれどブルースをベースにして結構楽しく演奏できた。

やれやれ、今日の仕事はお仕舞かな、と、昨日のイーさんなんかと安心してビールを飲んでいたら、 11時半に「これで最後だから」パクさんに言われたので帰るのかと思ったら「ラストのステージ」の意味だった。 「サンジョウ・アリラン」をミニョンが弾きだしたので、それに合わせてみる。
良い曲だ。不思議とクレズマの「デル・ガスン・ニグン」に似ている。

1時を過ぎてからキムさんの招待で呑みにいく。
普段はデリバリー専門の店、との事で完全に誰かの家の部屋みたい。 でもここで出て来たブルゴギはキムさんが自慢するだけの事はある。うまい!
キムさんの弟分がマッコリを買って来てくれる。
「本当に日本人はマッコリが好きだ。シンフォニック・オーケストラの人間も、マッコリ、マッコリと騒いでいたよ。」と、凄く不思議そう。
こちらには何故、韓国人がそれほどマッコリを好きではないのか、のほうが不思議だ。
6人の中でマッコリを呑んでいたのは私だけ。
どんどん注いでくれるので、ペットボトル一本、一人で呑んでしまった。
プハ!


6月12日(木)

朝、といっても12時に出発。
チェックアウトの時間はすごくいい加減だそうだ。
「日本は掃除の時間が決まっているから、大変なんだよね。」とパクさん。
いや、必ずしもそれだけの理由じゃないとは思うんだけど・・・。

ガソリンをいれる。ガソリン代の値上がりはこちらでも大問題。
ほぼ日本と同じくらいの値段だから、全体の物価から考えると日本より高い計算になる。
さらにビックリしたのはジーゼルのほうがガソリンより高い。
「昔は逆だったのに・・・。」とジーゼルのパクさんはボヤく。
高速道路で1時間くらいでプサン。
車内ではよく寝てしまった。

プサンのビーチの通りの店で昼食。
カルビタンを勧められたが、つい美味しそうなのでレンミョン(冷麺)を。
美味しかったけど、昨夜のマッコリと冷たいレンミョンが効いたのか、簡単にお腹を下してしまった。

泊まりは又、ラブホテル「バリハイ」。
残念ながらここは古いホテルで全体に奇麗とは言えなかったし、メール 環境も全くダメだったが、窓が海岸に向いているのはなかなか良い。

店はホテルからすぐだ、と聞いていたのにパクさんはなかなか店につけない。
彼もミニョンさんもかなり方向音痴だ、という事がだんだん分かってくる。
いったい何回強引なUターンをしたことか!

ライブハウスの『モンク』は韓国ではかなり歴史のある店だ。
磔磔」「月見ル君想フ」「スタパ」くらいの高さのステージがあり2階席もあり、PAもしっかりしていて、サウンドチェックも落ち着いて出来た。
2年前のここでの演奏も良かった記憶があるし、店も客もそれを覚えてくれているようだ。

本番は9時からなので、夕飯はライブの前になる。
モンクのマスターで、昼間はお医者さんだというDr.ヤンさんの奢りで「蟹屋」。
ひたすら「蟹」。辛いものをつける訳でもなく、茹でた蟹の足をはさみで切っては細い専用のスプーンで肉を掻き出して食べる。 めちゃめちゃ美味い訳ではないが、滅多に出来ない事なので、ありがたく黙々と食べる。
ライブハウスの従業員もトランぺッターとドラマーだそうで、彼らがPAと照明をやる。
その彼らは我々以上にスピードを上げて蟹を食べる。 時計を見るとほとんど演奏開始の時間だった。

客席は満員とはいかなかったが、いい感じで埋まっていた。 前回の評判が良かったのだそうだ。
どこでも、何度でも来ないと客は定着しない。
若い客が多く日本のライブハウスと似た感じでやりやすい。
そのせいか、やっと演奏が軌道に乗って来た。
ミニョンのピアノがはじけ、パクさんのチャンゴが冴える。
私もすっかり自分のペースになって来た。
2 2/1サークル」の自由さ、「ころべえ」の疾走、「K」の叙情、「サンジョウ・アリラン」の情感。
お客も演奏に集中してくれているのがよく分かる。 大きな拍手を受け、帰りに何人もにCDのことを聞かれるが、よりによって今日はあまり持って来ていない。
あっという間に売り切れ。
だって、ホテルのすぐそばだって聞いてたたから、後で取りに帰ればいいと思ってたんだもん。

終わって、そのまま店で飲む。
私はお腹を壊している(もう、そうでもないのだが)という理由でお茶をもらう。
酒は抜ける時は抜いとかないと。
店主のドクター・ヤンは自殺した初代の親友で、この場所の灯を消してはいけないとの決心でここを継いだのだそうだ。
批評家もやっていて「What's Jazz」というタイトルの分厚い本を出している。
楽しそうで熱そうな会話。
ハングルなのでよく分からないけど、プサンはこれから期待できる場所になっていきそうな予感。


6月13日(金)

朝、窓からさす強い朝日であまり眠れなかったらしく珍しくパクさんが朝飯に誘ってくれる。
わたしゃ、また良く眠れたよ。
近所で朝食、太刀魚のチゲ。骨が面倒くさいが、美味しいことは間違いない。
スターバックスでコーヒー。これはどこでも同じ。

プサンからデグへ「高速を使ったら一時間もかからない。」とパクさんに聞いていたけど、 「あれ?あれ、こっちかな?」とか言っている間に2時間半経過。
でも無事に到着。
まずはチェックイン。当然だけど、またラブホで今度の名前は「レモン」。
今日の会場は本当に近くて歩いて行けた。
新しい明るい店で「SoKong」。オーナーはパクさんの知っているドラマーだそうで、パクさんがここでやるのも初めて。

夕食は一見、民家みたいな目立たないところで、「まさか犬肉?」と、 ちょっと疑ったが普通に軽い韓定食だった。

PA環境は昨日のようには良くないが、ピアノ以外は生音で大丈夫。 パクさんの古い友達とかもお客さんにいて、悪くない雰囲気だと思っていたら、1セットの3曲目の私のバスクラ・ソロが終わったところで突然、休憩を宣言。こういう暑い日は4曲目に「サマータイム」を入れようかね、と言っていたのに、カンカンに怒ってオーナーに食って掛かっている。
どうやら、演奏中に客に注文をとりに従業員が動いていたのが気に障ったようだ。
「だから、韓国の客は集中して演奏を聴こうとしない。普通は客が喋っているのを注意しに行くのがオーナーだろう。それをあいつは静かに一生懸命聴いている客のところに追加注文なんかとりに行って、わざわざ場の空気を壊している。あいつがミュージシャンだから俺は腹が立つんだ。なんで、ミュージシャンがミュージシャンの気持ちがわからない!
ここが新しい店だから怒るんだ。俺たちは韓国に良い音楽と良い聴衆を育てる責任もある。ここがそういう場所になるかどうか今が一番大事なのに、あいつにはそれが分からない。」
パクさんの怒りは収まらない。また、オーナーを捕まえると外に出て行ってしまった。
「じゃあ、次はサマータイムからやろうか?」とミニョンさんと話していたら、客の一人がメモ用紙に「リクエスト」といってミニョンさんに渡す。「すみません、私たちはお客さんのリクエストを受け付けてないんです。」と言って断った。そして私の耳元で「リクエスト、サマータイムだって。」と言って笑った。「演奏したら殺すからね。」と言ってもう一度笑った。私は「じゃあ、ウィンター・ワンダーランドをやろう。」と言ってまた笑った。
2セット目の演奏は凄まじくアグレッシブなものになった。
パクさん叩きまくり。
バラードの「K」までもがそうだった。
客は意外な事に熱狂して大きな拍手と声援をくれ、喜んで興奮して帰って行った。

パクさんの友達にはアーティストが多い。
その何人かとその中心にいるDr.タンさんに誘われてテーブルにつく。
タン氏は自分の病院の庭にコンサートの出来るスペースを持っていて、 今度はそこでやろうよ!と酔っぱらった赤い顔で言ってくれる。
ビールを奢ってくれるが、何故か最近の韓国での流行のビールはレモン味で美味しくない。
ベルギーのビールがあるというのでそれにしたら、わざわざその韓国のレモン味に似たようなテーストのビールだった。
「すみませんが」と、贅沢を言ってアサヒのスーパードライを取ってもらう。
まさか、このビールが一番苦みがあって味が濃いビールだとは!

みんなが帰った後、私とパクさんと、デグのパクさんの弟子は隣のモツ焼き屋に残った。
パクさんはどれだけ韓国で自分の音楽をやる事が大変な事かを語り、私は日本がやはり大変だったけど、ジャズ喫茶や我々を取り巻く聴衆の環境など、恵まれていた面も語り、これからの韓国での可能性を探す事を誓った。


6月14日(土)

今日は6、7時間の移動距離がある。
朝は食べずに高速道路のドライブインまで我慢。
そこでソーロンタンを食べるが、まあ立ち蕎麦みたいなものだと理解してもらおう。
たいしたものではない。
そこでもキムチだけはフリーでいくらでももらえる。
TVでは宮城の地震のニュース。
かなり大きな扱い。
心配だったが、その後実家のある仙台ではそれほど被害がないと知り、少しだけ安心。
電話を借りたが繋がらない。
風景は低い山と緑が続く。日本と違わないと言えば違わないのだけれど、直感的に何かが違うような気がする。
この間違い探しは難しい。

ソウルを迂回しガッピョンの駅へ向かい、ソウルから手伝いに来てくれるパクさんの友達を待つ。
のんびりした風景。お年寄りが煙草を吹かしながら井戸端会議。
友人到着。
車に乗り込もうとすると、タイヤがパンクしているのが見つかる。
携帯でJAFみたいなものを呼ぶパクさん。
再びのんびりした風景。お年寄りが煙草を吹かしながら井戸端会議。
タイやには大きな釘が刺さっていた。
この駅前で刺さったのであろう。
よく見るとあちこちに危ないものが落ちている駅前。

向かった先は川沿いの美しい風景の中にある美術館のような建物。
ここは「ガイル・ギャラリー」という個人の美術館。
ちゃんと、そこに音楽ホールがある。
小さいけれどPAも。
これが全部、個人の美術家の持ち物。
全体にセレブな雰囲気が漂う。

隣接している住家でのり巻きなどをつまむ。

休憩なしのワンセット。
最後の曲で、昨日やりそこねた「サマータイム」。川で魚は跳ねているし、ばっちりのシチュエーション。
最後はテーマを吹きながら会場の外へ去る。
お客の満足げな表情。
決まった!と思った。
すると、パクさんがもう一曲、もう一曲、とステージから私を呼ぶ。
西陽の当たる部屋」をやりましょう!
えー、それは勘弁。今のサマータイムと似たような雰囲気だし、キーも同じ。
それに、今のところで終わったらすごくカッコ良いじゃない!
だいたい、予定ではさっきの曲が最後のはずじゃない。
このへんのステージングは良く理解できない。
抵抗しながらもステージに。
勝手に「ゴースト」をやらせてもらう。

さらに主催者が「どうでしょう皆さん、ぜひアンコールをやってもらいましょう。」とNHK的発言。
なんだかなあ。さっき外に出てかなきゃ良かった。

CDもいっぱい並べたのに全然売れない。
セレブの集まりなんだなあ。
みんな川の見える場所に移動してレモン味のビールなど飲んでる。
私は今日は呑まない。

パクさんの車でソウルへ向かう。
途中で豚の焼き肉。トンカツ並みの大きい豚肉を焼いて、焼き上がるとはさみで小さく切っていって、味噌や焼いたニンニクなんかを一緒にサンチェなどに巻いて食べる。
美味い!でも食いきれない。

ホテルはソウル市内のイーサドンなどからも遠くない「ノーブレ」。
一見ビジネスホテルだが、ラブホ兼用らしい。
パソコンが繋がらなかったのを、ホテルマンさんが40分くらいがんばって、備え付けのパソコンのシステムを変えて、私のパソコンに繋ぎ、エクスプローラーを使って接続。
どうやったんだろう?
凄い。

久しぶりに繋がってショックだったのは母の病状の悪化。
けっこう危険な状態らしい。
早い便に替えられないかいろいろネットを覗くが月曜日は満員。
もともと満員なので火曜日に帰る事になっていたのだ。
どうしようもない。


6月15日(日)

あまり眠れなかった。
心配でメールをしょっちゅう覗き込む。
昼もあまり部屋から出たくなかったので、コンビニでバナナと豆乳とパンを買って食べる。
どうって事ない味だが、なんだかパンが新鮮。

夕方、空港であったソラさんが久しぶりに来てくれて、彼女の運転でCDショップの「After Hours」へ。
インストア・ライブである。
ミニョン、パクの二人に、今日はソン・ソンジュ氏とイム・ダルギュン氏の二人のテナー・サックスが加わる。
やっと、日本に電話が通じ、母の容態が少し落ち着いた、と聞きホッとする。

After Hours」に自分のCDを数種類渡す。
 自分の入った金大煥さんや、サウンドスケープのCDをもらう。
安かったのでジョニー・ホッジスのCDを買う。

食事は近所で韓定食。とりあえず簡単に。

お客さんは2、30人。Tpのチェ・ソンベさんの姿も。
なんか、ニューヨークやヨーロッパあたりの都会的な雰囲気がある。

一曲いつものトリオでやるが、ミニョンがピアノではなくシンセのオルガンなので、なんか不思議にプログレっぽい音に聴こえて面白い。
次のソロでは、自分がサーキュラー・ブレスなどでカン・テファンさんに影響されている事なども話してバスクラのソロをやる。
そしてまず、イムさんとサックスDuo。
インプロ、全く初めて、と聞いていたのに意外と面白い。
なんだ、結構やるじゃん。
次のソンさんとはバスクラで。
おとなし気味だけど、こちらの方が一緒に曲を作っている感じがする。
後から聞いたら、最初はきっとイムさんがソプラノを使うと思っていたのでブリブリやってやろうと思っていたら、イムさんがテナーでブリブリいってしまったので、違う事をやろうと考えた、との事だった。
おもしろかった。
でも、そのあと「西陽の当たる部屋」を全員で、とのパクさんの提案はあまり上手くいかなかったように思う。
「グワーとやろう」と考えたパクさんと、他の思惑が噛み合なかったためだと思う。
でも、全体的には面白いコンサートだったと思う。

ホテルのそばまで帰ってパクさんミニョンさん、そして友人との4人でポジャン・マチャ(屋台)へ。
マッコリを呑み、イカ刺しやら鳥の爪などを食べる。
思いっきり音楽談義。
結構白熱したが、酔っぱらうとお互い相手の意見は聞いてないかも・・?
でも面白かった。


6月16日(月)

メールで見ても母の容態は安定して来たようだ。
少し安心。
イーサドンあたりを歩いてみるが、観光客ばかりでビックリ。
昔はわりとギャラリーや書や筆、民俗楽器などの落ち着いた町並みで品のいい喫茶店などのあるところ、と思っていたら、今はまるで竹下通りのようだ。
ホテルのそばまで帰って適当な店に入って昼食にする。
ある程度、ハングル読めるようになってきたのでメニューから、知っているものを頼もうと思っていたら、ひとつとして知っている名前がなかった。
発音できそうなので、なんだか分からないけど「ポクチリ」というものを頼んだ。
「チリ」という言葉が引っかかって、日本だったら「てっちり」とかふぐ鍋の事を言うんだよなあ、と思っていたら見事に予想が当たって「ふぐ鍋」だった。
たれにわさびが大量に付いている。
まず、わさび無しで食べてみたら美味しかったので、今度はわさびを入れてみたらそれは失敗だった、と言うしかない。
でも、総合点としてはまあまあかな?

夜はパクさん達と新しく出来た人工の川縁を散歩し、またホテルのそばで、辛い真っ赤っかの鳥鍋。これは美味しい。
今日はオフだと思っていたら、「新しいライブ・ハウスが出来たから演奏しに行こう。」とPalmというライブハウスへ飛び入りすることになる。

お客はそれまで若いピアノトリオの音をバックにお喋りしていたが、我々の演奏には耳を傾けてくれた。
でも一組はそそくさと帰って行った。
終わってから客が話しかけてくる。
「なんか、こう胸に訴えてくるものが会った。こういう音楽を聴いたのは初めてだ。」
反応は確実にあった。
「こういう事を繰り返して行かないと、韓国のジャズは変わらない。誰もバックグラウンド・ミュージック以外のジャズを聴いたことがないんだから。」とパクさんは言う。
二人でずっと闘っているのだ。

たった一週間だったけど、本当に素晴らしい旅だった。
パクさん、ミニョンさんと再会を約束して別れる。
次は日本か、韓国か。


6月17日(火)

ホテルの向かい側にあるバス停で金浦空港行きのバスを待つ。
昨日パクさんから聞いたところでは「インピョン行きのバスは必ず金浦を通るから大丈夫」。
バスの案内を見ても金浦の字はどこにも見えないけど、きっとそうなの だろう。
バスが来て「金浦?」と聞くと「No! インピョン。金浦には行かない。」と言って行ってしまった。
まあ、この際タクシーだな、と、タクシーをつかまえて乗り込む。 約30分強。
ちょっと心配したけど日本円で考えれば2000円くらいだった。 めちゃくちゃ安い。
無事空港へ。

さようなら韓国。
カムサハムニダ!

2008.6.20 梅津和時